神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

テーノス(7):サラミースの海戦

テーノス:目次へ ・前へ この時のペルシア軍のギリシア侵攻は、アテーナイによってマラトーンの戦いで食い止められます。彼らはアテーナイに敗北してペルシアへ引き返していきました。とはいえ、テーノス人はペルシアの軍事力の大きさを印象付けられたので…

テーノス(6):ペルシア軍の侵攻

テーノス:目次へ ・前へ ・次へ この時のペルシア軍のナクソス侵攻は失敗しました。しかし、ペルシアは9年後(BC 490年)にまたナクソスに侵攻します。今回はナクソスだけでなく、アテーナイとエレトリアをも標的にしていました。というのは、BC 499年にペ…

テーノス(5):ポリュクラテース

テーノス:目次へ ・前へ ・次へ テーノスはBC 6世紀後半サモスの僭主ポリュクラテースの支配下にあったかもしれません。少なくともテーノス島のすぐ近くにあるデーロス島は一時期ポリュクラテースの支配下にありました。そのことからテーノスも同じようにポ…

テーノス(4):レーラントス戦争

テーノス:目次へ ・前へ ・次へ BC 8世紀頃、ギリシア世界の中で一番繁栄していたのは、エウボイア島のまん中あたりにある2つの都市、カルキスとエレトリアでした。ところで、このカルキスとエレトリアはBC 710年頃から戦争状態になります。原因は、両都市…

テーノス(3):カーリア人

テーノス:目次へ ・前へ ・次へ (上:デーロス島) テーノスが登場する神話として私が見つけることが出来たのは以上の2つだけでした。そこで次に、テーノス島の近くにあるデーロス島に関する伝説のなかにテーノスの姿が何か見えないかと思って、調べてみ…

テーノス(2):極北人からの捧げもの

テーノス:目次へ ・前へ ・次へ テーノス島が登場するもう一つの神話は、北の果ての国に住み、アポローン神を崇拝する極北人(ヒュペルボレオイ)という神話的な種族が、アポローン神の聖地であるデーロス島に捧げものを送る際に、その供物がテーノス島を通…

テーノス(1):カライスとゼーテース

テーノス:目次へ ・次へ テーノスはキュクラデス諸島の中の1つの島で、アンドロス島、ミュコノス島、デーロス島のそばにあります。近現代ではこの島は奇跡の聖母マリアのイコン(聖なる絵)の伝説による巡礼の地として知られています。すなわち、1822年に…

テーノス:目次

都市一覧へ 1:カライスとゼーテース テーノスはキュクラデス諸島の中の1つの島で、アンドロス島、ミュコノス島、デーロス島のそばにあります。近現代ではこの島は奇跡の聖母マリアのイコン(聖なる絵)の伝説による巡礼の地として知られています。すなわ…

アカントス(8):その後のアカントス

アカントス:目次へ ・前へ (上:アカントスの遺跡) アテーナイとスパルタの間の戦争(ペロポネーソス戦争)は、BC404年にスパルタの勝利で終結しました。その後しばらくはスパルタがギリシア世界の覇権を握りました。しかし、アカントスに対するスパルタ…

アカントス(7):平和条約

アカントス:目次へ ・前へ ・次へ このあとブラーシダースとその軍は、予定通りアンピポリスを陥落させ、占拠しました。それからも彼はカルキディケー地方の町々を次々とスパルタ側に寝返らせていきました。 ブラーシダースはアムピポリス攻略後、同盟の諸…

アカントス(6):ブラーシダース

アカントス:目次へ ・前へ ・次へ カルキディケー地方に到達したブラーシダースの軍は、アテーナイ勢が根拠地にしているポテイダイアを通り過ぎてアカントスにやって来ました。これはアカントスの貴族派の人々が呼んだからなのですが、市民の大多数はそのこ…

アカントス(5):ペロポネーソス戦争

アカントス:目次へ ・前へ ・次へ 翌年(BC 479年)、マルドニオスはペルシア軍を率いてギリシア本土を南下し、再びアテーナイを占領しました。しかしその後プラタイアの戦いで、ギリシア軍に敗北し、マルドニオスは戦死しました。ほぼ同じ頃、ギリシアの連…

アカントス(4):サラミースの海戦

アカントス:目次へ ・前へ ・次へ 前回お話ししたクセルクセースの運河ですが、そもそもこの運河はそれほど必要ではなかったとヘーロドトスは書いています。運河建設はクセルクセースの見栄だと彼は言います。権力者の見栄のために多くの人々が苦労するとい…

アカントス(3):クセルクセースの運河

アカントス:目次へ ・前へ ・次へ BC 490年のペルシアによるギリシア遠征は、アテーナイに敗北する結果となります。その後ペルシア王ダーレイオスは、再度の遠征を準備しますが、その途中で死亡します。ダーレイオスの息子のクセルクセースが即位し、ギリシ…

アカントス(2):ペルシアの支配

アカントス:目次へ ・前へ ・次へ 英語版のWikipediaの「アカントス」の項によれば、アカントスの港を通して交易されるのは、近くの森林からの木材や鉱物(おそらく銀)、そして農産物だったということです。さて、コインが発行され始めたBC 530年頃は東か…

アカントス(1):創建

アカントス:目次へ ・次へ エーゲ海の北西の沿岸地域はカルキディケー地方と言います。エウボイア島の町カルキスの植民市がこの地方に多く建設されたためにカルキスにちなんでこう名付けられました。このカルキディケー地方には南に向けて半島が3つ伸びて…

アカントス:目次

都市一覧へ 1:創建 エーゲ海の北西の沿岸地域はカルキディケー地方と言います。エウボイア島の町カルキスの植民市がこの地方に多く建設されたためにカルキスにちなんでこう名付けられました。このカルキディケー地方には南に向けて半島が3つ伸びていて、…

ケオース(15):その後のケオース

ケオース:目次へ ・前へ ケオースはアテーナイを盟主とするデーロス同盟に参加していました。そのためBC 431年にペロポネーソス戦争が始まると、ケオースはアテーナイに兵力を提供しました。この頃までにアテーナイは同盟諸国を自分の都合で動かせるほど強…

ケオース(14):ケオースの宗教風土

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ 前回の「(13):プロディコス(2)」で季節の女神たちホーライや農業の神アリスタイオスが登場したので、ホーライやアリスタイオスに関する記述を調べてみました。まずはホーライについてです。 さてヘーレーは鞭を執(…

ケオース(13):プロディコス(2)

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ ここまで書いたところで、ネットで「ソフィスト・プロディコスの宗教思想」(中澤務 関西大学教授 著)という面白い論文を見つけました。読んでみて、学者はさすがだな、と思いました。この論文の主題は、古代の書物に引用さ…

ケオース(12):プロディコス(1)

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ ケオース島は、シモーニデース、バッキュリデースという詩人を生み出した以外にも、ソフィスト(知恵者)と言われる人も生み出しています。ソフィストと呼ばれたプロディコスはケオース島のイウーリスの出身だと言います。例…

ケオース(11):バッキュリデース

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ ケオース生まれの詩人シモーニデースには妹がいました。その妹は自分の生まれた町であるイウーリスに住む男性と結婚し、息子が生まれました。その息子は祖父(父親の父親)の名をとってバッキュリデースと名付けられました。…

ケオース(10):ペルシア戦争

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ 今までシモーニデースの生涯を追ったところでペルシア戦争が登場しましたので、ペルシア戦争とケオースの関わりを調べていきます。 ギリシア本土がペルシアとの戦争に巻き込まれた原因は、BC 499~493年のイオーニアの反乱で…

ケオース(9):シモーニデース(3)

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ しかし当時のテッサリアの宮廷では文芸への理解があまりありませんでした。こんな話が伝わっています。スコパスという名のスコパス家の当主はシモーニデースに、ある拳闘家の勝利を祝する讃歌を書くよう依頼してきました。シ…

ケオース(8):シモーニデース(2)

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ BC 480年のテルモピュライの戦いの時シモーニデースは何歳だったでしょうか? 当時の人々の誕生年はなかなかはっきりしないのですが、多くの学者の説ではシモーニデースの誕生年はBC 556年だそうです。それを元に計算すると…

ケオース(7):シモーニデース(1)

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ 今までは伝説上の人物の話でしたが、ここからは実在の人物の話になります。シモーニデースはケオース島の町イウーリスに生れ、のちに競技会の優勝者への頌歌や戦死者の墓碑銘の作者として有名になりました。しかし彼の生涯は…

ケオース(6):アコンティオスとキューディッペー

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ 次にご紹介するケオースにまつわる伝説は、ケオース生れの美少年アコンティオスとアテーナイ生れの美少女キューディッペーの物語です。 アルテミスのことを歌おう。その矢は黄金作りで、御神は猟犬を励まし給う。 けがれなき…

ケオース(5):デーロス島の祭礼まで

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ 次に紹介するケオースに関する伝説「アコンティオスとキューディッペー」では、デーロス島でのアルテミス女神の祭礼の話が出てきます。デーロス島がアポローンとアルテミスの誕生の地としてイオーニア人たちから神聖視された…

ケオース(4):イーカリオス

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ 古代のケオースの人々が夏にシリウス星に犠牲を捧げる風習の由来は以上のものですが、この伝説がイーカリオスという男にまつわる別の伝説と融合しました。イーカリオスの伝説はケオース島とは直接関係ありませんが、その内容…

ケオース(3):アリスタイオス

ケオース:目次へ ・前へ ・次へ ケオース島にまつわる神話の1つは、古典時代のケオース島住民が「おおいぬ座」の一等星シリウスに犠牲を捧げるという風習の起源を説いています。英語版Wikipediaの「ケア島」の項には以下のように書かれていました。 (ケオ…