神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

このブログの説明

このブログは、エーゲ海にあるさまざまな古代ギリシアの都市の創建から、ギリシアの古典期、あるいはローマ帝国の時代までの神話、伝説、逸話などを書いていったものです。それが60歳が近くなって見つけた私の趣味です(もう60は越えましたが)。記事を…

記事を書き始めた日

2017年 7月28日:(1)ミーレートス 11月18日:(2)ミュティレーネー 2018年 1月5日:(3)ハリカルナッソス 7月14日:(4)デーロス 8月25日:(5)テーラ 10月5日:(6)アイギーナ 11月9日:(7)エペソス 12月22日:(8)コース 2019年 3月9日:(9)サモス 5月23日:(10)…

クノッソス(27):最終回

クノッソス:目次へ ・前へ ここから先については私の力不足のため、書くことが出来なくなりました。もっとちゃんとした終わり方にしたかったのですが・・・・。このブログでは古代都市を50個取り上げることにしていたので、この「クノッソス」で終わりです…

クノッソス(26):BC 1200年の謎

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ BC 1200年からあとの数百年のクノッソスの様子はやはり分かりません。この頃になるとギリシア本土でも次々と宮殿が破壊され、ミュケーナイ文明は滅亡してしまいました。この滅亡の原因はいまだに明らかになっていません。…

クノッソス(25):ペリシテ人

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ ギリシア本土では、BC 1200年頃から考古学的な遺物が少ない暗黒時代に入ります。しかし、クノッソスのあるクレータ島ではそれより150年も早いBC 1350年頃に暗黒時代に入ってしまうのでした。この間いったい何が起きたのか…

クノッソス(24):歴史と伝説の狭間

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ BC 1450年頃、クレータ島の各地の宮殿が破壊され、クノッソスの宮殿だけが残る。たぶん、この頃ミュケーナイ文明のギリシア人がクノッソス宮殿を占拠。 BC 1350年頃。クノッソス宮殿の崩壊 BC 1200年頃。トロイア戦争(あっ…

クノッソス(23):ミノアの女神たち

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ クノッソスを始めとするミノア文明の遺跡では、宗教に関する遺物が多く発掘されているのですが、線文字Aが解読されていないために、神名を始めさまざまなことが不明のままです。それでもミノアの宗教では女神たちが重要な…

クノッソス(22):ミノア文明の盛期

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ BC 1628年頃にテーラ島の大噴火。 BC 1600年頃。ミノア文明の盛期。 BC 1450年頃、クレータ島の各地の宮殿が破壊され、クノッソスの宮殿だけが残る。たぶん、この頃ミュケーナイ文明のギリシア人がクノッソス宮殿を占拠。 …

クノッソス(21):ミノア人

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ ここからは視点を変えて、考古学によって古代のクノッソスやクレータ島についてどのようなことが分かってきたかを見ていきます。クレータ島の先史時代の文明を考古学ではミノア文明と呼んでいます。この名前は、伝説上のク…

クノッソス(20):プラトーンが再構成した先史時代(4): 再びドーリス人について

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ 話は、トロイア戦争後に進みます。 アテナイからの客人 きっとそれらの都市が、かのイリオン(トロイア)に向かって軍を勧めたのでしょうね、それも、おそらくは海路をも使って、その頃はすでに、誰もが、恐れることなく海…

クノッソス(19):プラトーンが再構成した先史時代(3): トロイア戦争

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ プラトーンはトロイアの建設の伝説を取り上げ、それをもとに、人びとが山麓から平野に下りて来た時代があったとしています。 アテナイからの客人 それはホメロスが、二番目につづき、三番目のものはこのようにして生じたと…

クノッソス(18):プラトーンが再構成した先史時代(2): 山麓に住む人々

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ プラトーンは、大洪水を生き延びた人々の子孫は技術をあまり持っていなかったし、小集団に分かれて暮らしていたと論じます。 アテナイからの客人 そこでわたしたちは、こんなふうに言ってもよいのではないでしょうか。こう…

クノッソス(17):プラトーンが再構成した先史時代[1]:大洪水。

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ プラトーンの対話編「法律」から当時(BC 350年頃)のクノッソスの姿が少し見える箇所は、以下のところでしょう。 クレイニアス (中略) ほかでもありませんが、クレテの大部分が、ある植民を行なおうとくわだてており、…

クノッソス(16):ディクテオン洞窟

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ プラトーンの対話編「法律」は、次のように始まります。 アテナイからの客人 ねえ、あなた方、神さまですか、それとも誰か人間なのですか、あなた方のお国で法律制定の名誉をになっておられるのは。 クレイニアス 神さまで…

クノッソス(15):ペルシア戦争

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ さて、時代をBC 480年のペルシアによる2回目のギリシア本土侵攻の頃まで進めます。この時ペルシア側はギリシア本土全体を服属させるつもりで侵攻してきました。これに対して多くのギリシア都市が抵抗するつもりでいました…

クノッソス(14):エピメニデース(2)

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ エピメニデースはアテーナイからクノッソスに帰って間もなくしてから死んだということですが、彼は非常に長命だったということです。 彼は帰国して間もなく死んだのであるが、プレゴンが「長命について」のなかで述べてい…

クノッソス(13):エピメニデース(1)

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ BC 640年頃のクノッソスにエピメニデースという名の男の子がいました。 エピメニデスは、テオポンポスその他多くの人たちが述べているところによると、パイスティオスの子であった。(中略)彼はクレタ人でクノソスの生ま…

クノッソス(12):リュクールゴスのクレータ島訪問

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ 前回少し登場したスパルタ人リュクールゴスは半ば伝説的な人物であり、彼の生きていた時代を特定することは難しいですが、プルータルコスの記事を元に述べてみます。 ドーリス人がスパルタを占拠した時にそこの王となった…

クノッソス(11):ドーリス人のクレータ島征服

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ ドーリス人がクレータ島を征服してからのクノッソスの情報はほとんどありません。考古学から言えることは、クレータ島全体を支配するような広域の政治権力がこの時代には消滅し、代わりにもっと小さな範囲を支配する権力が…

クノッソス(10):ドーリス人の来歴

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ ドーリス人というのは、もともとドーリス地方に住んでいたギリシア人の部族だとされています。 紀元前後に活躍したローマの地理学者ストラボーンは以下のように書いています。 アイトーリア人は西ロクリス人と国境を接して…

クノッソス(9):民族の変遷

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ では、ヘーロドトスの伝えるこの伝承の全体を見ていきましょう。 それはミノスがダイダロスの行方を求めて、今日シケリアと呼ばれているシカニアにゆき、ここで横死を遂げたと伝えられるからである。後になってクレタ人は…

クノッソス(8):疫病と飢饉

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ クノッソスに帰国したのちのイードメネウスのことが、BC 1世紀のローマの詩人ヴェルギリウスの作った叙事詩「アエネーイス」にわずかに述べられています。 そのとき噂が飛んでいて、将イードメネウスは国人に、 クレータの…

クノッソス(7):イードメネウス

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ イードメネウスは、トロイア戦争を描いたホメーロス作の「イーリアス」では、いろいろな場面で活躍しています。彼はここではピュロス王ネストールほど高齢ではないが、それでも白髪の交じる、もう若くはない人物として描か…

クノッソス(6):トロイア戦争まで

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ ミーノース王はミーノータウロスの死とアテーナイの少年少女たちの脱走を聞いて怒りました。やがてダイダロスがアリアドネーに入れ知恵したことを突き止めると、ミーノースはダイダロスと彼の息子イーカロスをラビュリント…

クノッソス(5): アリアドネー

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ ともかくも船はクノッソスに到着し、テーセウスとアテーナイの6名の少年たち、アテーナイの7名の少女たちはミーノースに促されて上陸しました。彼らはこのあと監禁され、明日は迷宮に追い込まれることになっていました。迷…

クノッソス(4):ミーノータウロス

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ ミーノースがクレータ島の王に即位する時にそれに異議を唱える人々がいました。その異議を出されたのが、海の神ポセイドーンを祭る儀式の時だったので、ミーノースは、自分がどれだけ神々に愛されているかを人々に示すため…

クノッソス(3):ミーノース王

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ ミーノースには、偉大な統治者であったという評判と、それとは矛盾するような、暴君であったという評判の2つが伝えられています。そして話としてまとまって伝わっているのは後者のほうで、それというのもそれがアテーナイ…

クノッソス(2):ヨーロッパという名前の由来

クノッソス:目次へ ・前へ ・次へ BC 5世紀の歴史家で「歴史の父」と呼ばれるヘーロドトスは、このエウローペーの伝説を妙に脱神話化した話を伝えています。 名前は伝わらないが、なにがしかのギリシア人が、フェニキアのテュロスへ侵入し、王の娘エウロペ…

クノッソス(1):エウローペー

クノッソス:目次へ ・次へ クレータ島はエーゲ海で一番大きな島で、この島より北側がエーゲ海、南側がリビア海と呼ばれています。つまりエーゲ海の南の境になっているのがクレータ島です。クノッソスはこのクレータ島の北岸の真ん中あたりに位置しています…

クノッソス:目次

都市一覧へ 1:エウローペー クレータ島はエーゲ海で一番大きな島で、この島より北側がエーゲ海、南側がリビア海と呼ばれています。つまりエーゲ海の南の境になっているのがクレータ島です。クノッソスはこのクレータ島の北岸の真ん中あたりに位置していま…