神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

このブログの説明

このブログは、エーゲ海にあるさまざまな古代ギリシアの都市の創建から、ギリシアの古典期、あるいはローマ帝国の時代までの神話、伝説、逸話などを書いていったものです。それが60歳が近くなって見つけた私の趣味です(もう60は越えましたが)。記事を…

カメイロス(4):ペイサンドロス

カメイロス:目次へ ・前へ BC 7世紀にはカメイロス出身のペイサンドロスという叙事詩人が活躍しています。彼は英雄ヘーラクレースの活躍を描いた叙事詩「ヘーラクレイア」の作者でした。彼はヘーラクレースを、獅子の毛皮をまとい、棍棒を担いだ人物として…

カメイロス(3):植民と傭兵の時代

カメイロス:目次へ ・前へ ・次へ ロドス島にかつてフェニキア人が住んでいたことに関しては、高津春繁著「ギリシア・ローマ神話辞典」に以下のような記述がありました。 イーピクロス ロドス島に侵入して、フェニキア人を追い払ったドーリス人の将。フェニ…

カメイロス(2):トレーポレモス

カメイロス:目次へ ・前へ ・次へ カメイロスの起源についての伝説はもうひとつあって、こちらはヘーラクレースの息子のひとりトレーポレモスがロドス島にやってきて、リンドス、イアーリュソス、カメイロスの3つの町を作った、というものです。トレーポレ…

カメイロス(1):ロドス島の起源

カメイロス:目次へ ・次へ 歴史家のヘーロドトスが小アジアのドーリス地方のドーリス人都市を6つ挙げているなかで、カメイロスについては書いていないことが気になってきました。ヘーロドトスがドーリス人の都市として挙げているのは、次の6つです。すな…

カメイロス:目次

都市一覧へ 1:ロドス島の起源 歴史家のヘーロドトスが小アジアのドーリス地方のドーリス人都市を6つ挙げているなかで、カメイロスについては書いていないことが気になってきました。ヘーロドトスがドーリス人の都市として挙げているのは、次の6つです。…

テネドス(11):ヘスティアー

テネドス:目次へ ・前へ テネドスとはあまり関係がないのですが、前回、女神ヘスティアーが登場したので、何か書いておきたくなりました。というのも、ヘスティアーは実際には厚く崇拝されていた女神であるのに、神話にはほとんど登場しない女神だからです…

テネドス(10):市議会議長アリスタゴラース

テネドス:目次へ ・前へ ・次へ BC 480年と479年に行われたペルシア戦争において、ギリシア諸都市の連合軍はペルシアを打ち破り、エーゲ海からその勢力を追い払いました。この戦いによって、テネドスもペルシアの支配から解放されました。その後、テネドス…

テネドス(9):ペルシアによる征服

テネドス:目次へ ・前へ ・次へ テネドス島は、ダーダネルス海峡(古代ギリシアの言い方ではヘレースポントス)を通過しようとする船にとって重要な位置を占めていたので、レスボス島の都市ミュティレーネーと争うようになったと私は想像します。というのは…

テネドス(8):情報の少ない時代

テネドス:目次へ ・前へ ・次へ アイオリス人が植民市を建設したのちのテネドス島に関する情報は少ないので、叙述するのが難しいです。そこで、テネドス島の周囲でどんなことが起きていたのか、見ていくことにします。 テネドスはアイオリス人の植民市のひ…

テネドス(7):アイオリス人の植民

テネドス:目次へ ・前へ ・次へ トロイア戦争の後、ギリシア軍の一部はテネドス島に一旦停泊し、その後ギリシア本土に戻りました。ギリシア軍が去ったあとのテネドス島については情報がありません。おそらく島の原住民(トロイア人に近い人々)が独立を取り…

テネドス(6):トロイの木馬

テネドス:目次へ ・前へ ・次へ 都市の名前が「トロイア」なので、本当は「トロイアの木馬」と書くべきですが、一般に「トロイの木馬」と呼ばれているので、ここでも「トロイの木馬」と書きます。 さてギリシア軍はトロイアを攻めること10年、まだ攻め落と…

テネドス(5):トロイア戦争

テネドス:目次へ ・前へ ・次へ さて、ギリシア軍に占領されてからのテネドスについては、ギリシア軍との関連においてしか伝説がないようです。ギリシアの将帥たちはトロイアを攻める前に、ここテネドス島に軍を留めたまま、ヘレネーの夫だったメネラーオス…

テネドス(4):アポローン神の子供たち

テネドス:目次へ ・前へ ・次へ テネース自身がアポローンの子であった、という伝承もあります。この伝承では、アキレウスはテネースを殺したことによって、自分がアポローンに殺される運命になった、というふうに語られます。そして、アキレウスの母親で海…

テネドス(3):アポローン神の聖地

テネドス:目次へ ・前へ ・次へ テネドスはアポローン神の崇拝の中心地として知られています。「イーリアス」の冒頭近くには、テネドスにほど近い小アジア側の町、クリューセーのアポローン神の祭司クリューセースが登場します。彼は捕虜となった娘クリュー…

テネドス(2):古代の著作家の証言

テネドス:目次へ ・前へ ・次へ 前回ご紹介したテネースの物語についての古代の証言を載せておきます。まず、パウサニアースの「ギリシア案内記」からです。 これらの斧は、テネドス出身のエウテュマコスの息子ペリクリュトスによって(デルポイに)奉納さ…

テネドス(1):テネース

テネドス:目次へ ・次へ テネドス島は、小アジアのエーゲ海沿岸沖に浮かぶ島です。詳しく言えば、かつてトロイアの町があった場所の沖合に位置しています。そのため、ギリシア神話のトロイア戦争の物語の中で、テネドス島は時折重要な舞台として登場します。…

テネドス:目次

都市一覧へ 1:テネース テネドス島は、小アジアのエーゲ海沿岸沖に浮かぶ島です。詳しく言えば、かつてトロイアの町があった場所の沖合に位置しています。そのため、ギリシア神話のトロイア戦争の物語の中で、テネドス島は時折重要な舞台として登場します…

ネオン・テイコス

都市一覧へ ネオン・テイコスというのは古代のギリシア語で「新しい壁」という意味です。しかし「新しい」という名がついていてもこの町の起源はキューメーと同じくらい古い町です。ネオン・テイコスはキューメーと同じくアイオリス人の町です。ネオン・テイ…

キラ(4):アイオリス人の到来

キラ:目次へ ・前へ キラについてお話し出来ることは、これでほぼ尽きました。かつて、キラが影響力のある町だったことは、ストラボーンが以下に書いているように、かなり遠方の山がキラにちなんだ名前になっていることからも推測出来ます。 レスボス島のキ…

キラ(3):キラース

キラ:目次へ ・前へ ・次へ ストラボーンは、キラにアポローンの神殿があったと書いています。 現在テーベーの近くにはキラという場所があり、そこにはアポローン・キラエウスの神殿があります。(中略)コロナイのダエースは、アポローン・キラエウスの神…

キラ(2):ギリシア人到来以前の町

キラ:目次へ ・前へ ・次へ 紀元前後に活躍したストラボーンの「地理誌」によればキラの町とクリューセーの町は近くにあったということです。 アドラミュッティオン地方にはクリューセーとキラがあります。現在テーベーの近くにはキラという場所があり、そ…

キラ(1):アポローン神の聖地

キラ:目次へ ・次へ 現代のトルコ共和国の西側、エーゲ海沿岸は、古代にギリシア人が多くの植民市を作っていました。そのギリシア人の当時の方言により、南から北の順にドーリス地方、イオーニア地方、アイオリス地方に分けられていました。 ヘーロドトスは…

キラ:目次

都市一覧へ 1:アポローン神の聖地 現代のトルコ共和国の西側、エーゲ海沿岸は、古代にギリシア人が多くの植民市を作っていました。そのギリシア人の当時の方言により、南から北の順にドーリス地方、イオーニア地方、アイオリス地方に分けられていました。…

アンティッサ(8):戦争の終わり

アンティッサ:目次へ ・前へ BC 412年、戦争はまだ続いていました。この年、スパルタ側に寝返ったキオスは、軍船を派遣してメーテュムナとミュティレーネーをスパルタ側に寝返らせました。しかし、アテーナイがすぐに察知して軍船を派遣し、この2つの町を…

アンティッサ(7):ミュティレーネーの反乱

アンティッサ:目次へ ・前へ ・次へ この頃アンティッサはミュティレーネーの影響下にありました。ペロポネーソス戦争開始から3年目のBC 428年、アンティッサはミュティレーネーとともにデーロス同盟を離脱することを目指して、アテーナイに対して反乱を起…

アンティッサ(6):デーロス同盟

アンティッサ:目次へ ・前へ ・次へ ミュカレーの戦いが終わったあと、サモス島に引き上げてきたギリシア勢についてヘーロドトスは以下のように書いています。 かくしてサモス、キオス、レスボスをはじめギリシア軍に加わって参戦していたその他の島の住民…

アンティッサ(5):イオーニアの反乱

アンティッサ:目次へ ・前へ ・次へ アンティッサはペルシアの初代の王キューロスの時にペルシアに服属しました。キューロスの次にペルシア王になったカンビュセースがエジプトを征服する時、その軍の中に、レスボス島のミュティレーネーの船があったことを…

アンティッサ(4):テルパンドロス

アンティッサ:目次へ ・前へ ・次へ BC 7世紀に入るとアンティッサから音楽家のテルパンドロスが出ます。英語版Wikipediaの「テルパンドロス」の項によれば彼は「ギリシア音楽の父」であり「抒情詩の父」であると言われているということです。しかし残念な…

アンティッサ(3):アイオリス人のレスボス島到来

アンティッサ:目次へ ・前へ ・次へ 前回、アキレウスがレスボス島を攻めた話をしましたが、アキレウスとレスボス島の町の名前の間には奇妙な一致があります。前々回、アンティッサの名前の由来を述べたところで、レスボス島はかつてイッサと呼ばれていたと…