神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

2018-01-01から1年間の記事一覧

コース(3):コースへの植民

コース:目次へ ・前へ ・次へ トロイア戦争が終結し、その後、ギリシア本土には北からドーリス人が攻めてきてペロポネーソス半島を征服しました。こうして出来たドーリス人の町の中にエピダウロスがありますが、コースはそのエピダウロスからの植民によって…

コース(2):ペイディッポス

コース:目次へ ・前へ ・次へ さて、ヘーラクレースの子としてコースで生まれたテッサロスについては、物語が伝わっていないようです。その二子、ペイディッポスとアンティポスについてはイリアスにあるように、トロイア戦争に出陣しています。ペイディッポ…

コース(1):神話時代

コース:目次へ ・次へ コースはエーゲ海に浮かぶ島ですが、トルコ側のハリカルナッソスのすぐ目と鼻の先にあります。この島の有名な遺跡アスクレーピエイオン(=アスクレーピオス神殿)から、対岸のトルコ側がよく見えます。 コース島の位置は、下の図のと…

コース:目次

都市一覧へ 1:神話時代 コースはエーゲ海に浮かぶ島ですが、トルコ側のハリカルナッソスのすぐ目と鼻の先にあります。この島の有名な遺跡アスクレーピエイオン(=アスクレーピオス神殿)から、対岸のトルコ側がよく見えます。コース島の位置は、下の図の…

エペソス(14):ケルスス

エペソス:目次へ ・前へ 「神話と歴史の間のエーゲ海」と言いながら、話も紀元後になりましたので、そろそろエペソスの物語も終わりにしたいと思います。最後に、ケルススという人物について取り上げておこうと思います。エペソスの遺跡の中で目立つものの…

エペソス(13):使徒パウロ

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ エペソスは新約聖書にも登場します。使徒パウロがエペソスに滞在していた時の出来事が、使徒行伝19章に載っています。 ところで私はキリスト教についてはそれほど知らないので、私の解釈に何か間違いがありましたら、すみま…

エペソス(12):アントニウス

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ ここまでのエペソスの歴史で1つ特徴的なのはアルテミス神殿の重要さです。もうひとつは、変人が多いということです。悪口詩人ヒッポナクス、人間嫌いの哲学者ヘーラクレイトス、有名になりたいがために死をも恐れず放火した…

エペソス(11):アルテミス神殿再建

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ アルテミス神殿炎上の年に生まれたマケドニアのアレクサンドロス(のちの大王)は、父親の急死により20歳でマケドニアの王位を継ぎます。そして2年後のBC 334年には小アジアに軍を進め、迎え撃つペルシア軍を蹴散らしました…

エペソス(10):ヘロストラトス

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ BC 387年にスパルタとペルシア王国の間で締結されたアンタルキダスの和約によって、エペソスを含む小アジアのギリシア都市はペルシア支配下に戻ることになりました。 さて、今までエペソスにおけるアルテミス神殿の重要性に…

エペソス(9):ペロポネーソス戦争終結まで

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ ヘーロドトスの「歴史」を見てもトゥーキュディデースの「戦史」を見ても、エペソスについての記述があまりありません。登場しても単なる地名としての言及しかなかったりします。それで私はイオーニアの反乱(BC 498年)から…

エペソス(8):ヘーラクレイトス(2)

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ ヘーラクレイトスは「すべてのものを通してすべてのものを操る(万有の理法の)意図を知」ろうと努めたわけですが、その学説はどういうものだったでしょうか。ディオゲネス・ラエルティオスによれば、それは以下のような説明…

エペソス(7):イオーニアの反乱

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ さて、少しの間ヘーラクレイトスから離れてエペソス市そのものに注目していきます。イオーニアの反乱勃発ののちエペソスはどうなったでしょうか。 ミーレートスに集結したイオーニア各都市の軍勢は船でミーレートスを発ち、…

エペソス(6):ヘーラクレイトス(1)

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ 「万物は流転する」という言葉で有名なヘーラクレイトスはエペソス出身の哲学者で、エペソスがペルシアに敗れ征服されたBC 546年頃、エペソスの初代の王アンドロクロスの子孫である王家に生まれました。ただ、その頃王家と言…

エペソス(5):ヒッポナクス

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ サルディスが陥落しエペソスもペルシアに征服された頃に活躍した、エペソス生まれの詩人がいました。しかし、ひょっとするとこの時にはすでにエペソスを離れて、 クラゾメナイに住んでいたかもしれません。というのは年代が…

エペソス(4):クロイソス

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ キンメリア人が去ってのち、洪水によってアルテミス神殿は倒壊しました。その後しばらくの間、神殿を再建出来ないでいました。さて、キンメリア人を小アジアから駆逐したのはリュディア王アリュアッテスでしたが、その次に王…

エペソス(3):キンメリア人の侵入

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ アンドロクロスの死後エペソスにどんなことが起きたのか知りたいところですが、例によってこのあたり300年ぐらいの情報はありません。そこで時代を下ってBC 8世紀後半まで行きますと、その頃、現在その痕跡が残っている最初…

エペソス(2):アルテミス神殿

エペソス:目次へ ・前へ ・次へ エペソスはかつて、別名アルテミシオンとも呼ばれるアルテミス神殿で有名でした。時代がかなり下りますが、BC 2世紀に選ばれた世界の7つの驚異(「世界の7不思議」というのは誤訳だそうです)の中にエペソスのアルテミス神殿…

エペソス(1):エペソスの建設

エペソス:目次へ ・次へ エペソスは小アジアのイオーニアにあった古代都市で、今ではトルコ領になっています。トルコの観光地として有名なところで、ここは古代ギリシア、ローマ好きにとってその興味を満たす場所だけでなく、新約聖書の中に「エペソ人への…

エペソス:目次

都市一覧へ 1:エペソスの建設 エペソスは小アジアのイオーニアにあった古代都市で、今ではトルコ領になっています。トルコの観光地として有名なところで、ここは古代ギリシア、ローマ好きにとってその興味を満たす場所だけでなく、新約聖書の中に「エペソ…

アイギーナ(12):最終回。その後のアイギーナ

アイギーナ:目次へ ・前へ 前回の「(11):衰退」で、アイギーナの話は終わりにしようと思っていたのですが、そうしたところどうも落ち着きがよくないと感じてきました。どこが変なのか考えてみたところ、現代もアイギーナ(現代名エギナ)の町は立派に…

アイギーナ(11):衰退

アイギーナ:目次へ ・前へ ・次へ サラミースの海戦ののち、アテーナイはテミストクレースの主導により、さらに海軍力を高めていきスパルタとの間に緊張が走りますが、自分の功績を繰り返し誇示するテミストクレースがアテーナイ民衆に嫌われ、陶片追放に会…

アイギーナ(10):サラミースの海戦

アイギーナ:目次へ ・前へ ・次へ こうして始まったサラミースの海戦ですが、この海戦で一番活躍したのはアイギーナの艦船でした。 (左:サラミースの戦士の像) さてサラミスのペルシア軍艦船の大部分は、アテナイ軍とアイギナ軍のために破壊され航行不能…

アイギーナ(9):進め、ヘラスの子らよ

アイギーナ:目次へ ・前へ ・次へ やがて2度目のペルシアの侵攻が始まりました。それは前回よりも大規模で、ペルシア王自らが軍を率いていました。テミストクレースは、対アイギーナ戦のためにという名目で建造した200隻にのぼる軍船で、ペルシア軍に当ろ…

アイギーナ(8):勝利

アイギーナ:目次へ ・前へ ・次へ アテーナイは有名なマラトーンの戦いでペルシア軍に大勝します。ペルシアの脅威を除去したアテーナイは、親ペルシアのアイギーナの現政権を転覆させ、親アテーナイの政権を樹立しようとする陰謀を進めました。アテーナイ側…

アイギーナ(7):ペルシアからの服属要求

アイギーナ:目次へ ・前へ ・次へ BC 498年、ミーレートスを中心とするエーゲ海東側のギリシア諸都市がペルシアに対して反乱を起こしました(イオーニアの反乱)。エーゲ海の西側では、アテーナイとエウボイア島のエレトリアがこの反乱に援軍を派遣しました…

アイギーナ(6):アイアコス一族の神霊

アイギーナ:目次へ ・前へ ・次へ アイギーナの最初の王であったアイアコスとその子孫はアイギーナの守り神として崇拝されていました。そしてアイアコスの一族はアイギーナ以外の都市国家でも崇拝されていました。そのことが分かる話が以下の伝説です。 BC …

アイギーナ(5):新興海上勢力として

アイギーナ:目次へ ・前へ ・次へ アイギーナはサモスとも不和でした。 アイギナ人がサモス人に対してこのような行為に出たのは、かねて怨恨を抱いていたからである。元はといえばサモス人の方が元凶であって、アンピクラテスがサモスに君臨していた頃、彼…

アイギーナ(4):アテーナイとの不和の起源

アイギーナ:目次へ ・前へ ・次へ これは、アイギーナとアテーナイがどうして敵対関係になったかという話です。この話は、アイギーナがエピダウロスから独立する前の頃から始まります。 エピダウロスが穀物の不作に悩んでいたことがあった。そこでエピダウ…

アイギーナ(3):アイギーナ植民

アイギーナ:目次へ ・前へ ・次へ 神話によればアイアコスはアイギーナの初代の王でした。そしてアイギーナの国民(というか都市国家なので市民とも呼ぶことも出来ます)はといいますと、ゼウスがアイアコスのために島にいる蟻を人間に変身させて国民にした…

アイギーナ(2):アイギーナの名の由来

アイギーナ:目次へ ・前へ ・次へ アイギーナという島の名前は、神話によればアイギーナという名前の女性に由来します。「テーラ(3):エウローペーを探すカドモス」で紹介したエウローペーという女性がヨーロッパという地名の由来になったのに似ています…