神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

2022-01-01から1年間の記事一覧

ピュロス(4):ネストールの初陣

ピュロス:目次へ ・前へ ・次へ エーリス人に虐げられてきたピュロスですが、これに一矢報いたのがネーレウスの一番下の息子のネストールでした。彼は単独でエーリスに行き、イーテュモネウスという者を殺し、牛や豚や馬を奪ってきたのでした。 ・・・・そ…

ピュロス(3):ヘーラクレースの侵攻

ピュロス:目次へ ・前へ ・次へ ピュロスのネーレウスのところに、ギリシア神話で最大の英雄であるヘーラクレースが来たことがあります。ヘーラクレースは自分の味方であったイーピトスという人物を狂って殺してしまい、その殺人の穢れをネーレウスに清めて…

ピュロス(2):メランプース

ピュロス:目次へ ・前へ ・次へ ネーレウスがピュロスに行き、ピュラースを追い出してピュロスの王となったのちは、アムピーオーンの娘クローリスと結婚し、二人の間には12人の息子と一人の娘ペーローが生れました。このペーローが年頃になると、その美しさ…

ピュロス(1):はじめに

ピュロス:目次へ ・次へ トロイア戦争では、ギリシアの諸将の中にピュロス王ネストールという老将が登場します。老将といえども気力は壮年の者に劣ることなく、戦場に活躍する君侯です。よく自分の昔の手柄を自慢したり、人々に助言を与えたりします。ホメ…

ピュロス:目次

都市一覧へ 1:はじめに トロイア戦争では、ギリシアの諸将の中にピュロス王ネストールという老将が登場します。老将といえども武芸のわざは壮年の者に劣ることなく、戦場に活躍する君侯です。よく自分の昔の手柄を自慢したり、人々に助言を与えたりします…

メガラ(19):プラタイアの戦い

メガラ:目次へ ・前へ パウサニアースは以上のようなアルテミス女神の奇跡譚を記していますが、ヘーロドトスはまったく記していません。ペルシア軍がメガラ地方で破壊活動を行なったのちに撤退したのは、コリントス地峡にギリシア軍が集結したという報せを…

メガラ(18):ペルシア軍侵攻

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ メガラ人たちは神々に祈るだけではなく、ペルシア軍に実際に立ち向かいもしました。ペルシアに対して抗戦する意志を示した他のギリシア諸都市とともに、テッサリア(ギリシア北部地方)に軍船20隻を派遣したのです。しかし、こ…

メガラ(17):エウパリーノス

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ テオグニスの同時代のメガラ人としては、土木技術者のエウパリーノスがいます。彼はサモス島の僭主ポリュクラテースに招かれて、サモスの町へ水を供給するための水路を建設しました。この水路は、サモスの町の背後にひかえる山…

メガラ(16):テオグニス(2)

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ 私にとってはテオグニスの詩は当時のメガラの政情が垣間見えるというところに興味があります。次の詩は、BC 545年にイオーニア地方のギリシア諸都市がペルシアによって占領された事件に関係しているように読めます。 私につい…

メガラ(15):テオグニス(1)

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ テオグニスは教訓詩というジャンルの詩人で、おそらくアテーナイのソローンの活躍した時代より1世代あとにメガラで活躍した人物です。ただし、彼の生涯についてはほとんど分かっていないそうです。生れた町もギリシア本土のメ…

メガラ(14):サラミース島

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ サラミース島は、メガラとアテーナイの間に位置しています。神話時代はアイギーナ島の初代の王アイアコスの息子にあたるテラモーンや孫のアイアースがサラミース島の王であることに示されるようにアイギーナ島と深い関係にあっ…

メガラ(13):テアゲネース

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ 植民市としてビューザンティオンを建設したBC 667年頃のメガラの政体は、おそらく貴族制であったと推測します。しかし、その後十数年のうちにテアゲネースという人物が政権を握り、僭主になったようです。同じ頃、隣のコリント…

メガラ(12):ビューザース

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ (右:ローマ皇帝コンスタンティヌス 在位AD 312~337年) ビューザンティオンは、その創建から約1000年後にローマ皇帝コンスタンティヌスによって大々的に作り変えられて「コンスタンティヌスの町(コンスタンティノープル)…

メガラ(11):植民活動

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ メガラ人はシシリー島(当時の呼び方ではシケリア島)にメガラ・ヒューブライアという植民市を建てましたが、これはBC 728年頃のこととされています。この植民の経緯については歴史家トゥーキュディデースが記しています。 こ…

メガラ(10):王制の廃止

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ さて、歴史家ヘーロドトスが 最初の侵入は、ドーリス族がメガラ市を創建した時のことで、この出征を当時アテナイの王位にあったコドロスの名にちなんで呼ぶのは、多分正しいのであろう。 ヘロドトス著 歴史 巻5、76 から 歴…

メガラ(9):メガラの2度目の創建

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ アリストマコスには3人の息子たちがいました。この3人が成人した時、ペロポネーソスへの帰還について三たび神託を求めました。すると神託はまたしても「三度目の収穫を待ってのちに帰るであろう」と答え、また「汝が狭い所に…

メガラ(8):ヘーラクレイダイのペロポネーソス帰還

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ 前回は、メガラ最後の王についての記事の時代を問題にしました。そしてこの話を、メガラがアテーナイに併合される前の話ではない、としました。とすると、メガラがアテーナイから独立することがなければ、この記事に合致する状…

メガラ(7):アテーナイに併合される

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ その後のメガラについての情報は断片的です。 また彼ら(=メガラ出身の著作家たち)の説では、テセウスがメガラの支配者ディオクレスを欺いて、メガラ人がもっていたエレウシスを奪い取り、そしてスケイロンを殺したのは、テ…

メガラ(6):スケイローン

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ 前回登場したペリポイアは、その後、サラミース島の王テラモーンの妻となり、トロイア戦争で活躍する英雄アイアースを産みました。サラミース島はメガラのすぐ前にある島です。前回、ペリポイアをテーセウスが守った話をしたの…

メガラ(5):アルカトオス

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ メガラ王になったメガレウスには、ティーマルコスとエウヒッポスという息子がいました。ところがティーマルコスが戦死し、エウヒッポスもキタイローン山(メガラの北にある)のライオンに食われてしまいました。ライオンは古代…

メガラ(4):ニーソス

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ アテーナイの王子でありながらメガラの王になったニーソスについては、その名にちなんでメガラの港の名前がニーサイアと名付けられたと伝えられています。メガラではニーソスの治世についてあまり伝えられていませんが、アテー…

メガラ(3):王位争い

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ 前回私は、レレゲス人はエーゲ海の島々に住んでいた、としましたが、そうも言い切れないところがあり、悩ましいです。というのは、小アジアのエーゲ海沿岸にもレレゲス人が住んでいた痕跡があるからです。そのことについてお話…

メガラ(2):レレゲス人

メガラ:目次へ ・前へ ・次へ ここでレレゲス人について少し調べてみました。レレゲス人についての一番古い言及はホメーロスの「イーリアス」によるもので、以下のような記述があります。なお、イーリアスはトロイア戦争の物語です。 まず海の方には、カー…

メガラ(1):起源

メガラ:目次へ ・次へ メガラは、アテーナイの西、コリントスの東にあります。アテーナイの西には大地の女神たちデーメーテールとペルセポネーの秘儀で有名なエレウシスがありますが、歴史の確かな時代にはエレウシスはすでにアテーナイに併合されていまし…

メガラ:目次

都市一覧へ 1:起源 メガラは、アテーナイの西、コリントスの東にあります。アテーナイの西には大地の女神たちデーメーテールとペルセポネーの秘儀で有名なエレウシスがありますが、歴史の確かな時代にはエレウシスはすでにアテーナイに併合されていました…

スキューロス(6):テーセウスのアテーナイ帰還(3)

スキューロス:目次へ ・前へ ヘーロドトスは、テーセウスの遺骨を回収する話に似た話を自著「歴史」に記しています。これはスパルタに関する話で、スパルタに下った神託が、英雄オレステースの遺骨を持ち帰るように告げたという話です。オレステースはミュ…

スキューロス(5):テーセウスのアテーナイ帰還(2)

スキューロス:目次へ ・前へ ・次へ テーセウスの遺骨がアテーナイに帰還した話の周辺には、いろいろ話がありますので(スキューロスから話が外れてしまうのですが)ご紹介したいです。 まず、デルポイの神託がアテーナイに対して「テーセウスの骨を持ち帰…

スキューロス(4):テーセウスのアテーナイ帰還(1)

スキューロス:目次へ ・前へ ・次へ ペルシア海軍にギリシア側が勝利したサラミースの海戦(BC 480年)から数年しか経っていないBC 476年あるいは475年にデルポイのアポローン神の神託はアテーナイ人に対して「テーセウスの骨を持ち帰って、自分たちのそばに…

スキューロス(3):パンモン

スキューロス:目次へ ・前へ ・次へ トロイア戦争が終わったあとは、どの町についても伝説の内容が貧弱になり、闇に消えていってしまいます。スキューロスの場合は、ネオプトレモスがトロイアに向ったあとが、まったく伝えられていません。それでも何か残っ…

スキューロス(2):アキレウスと息子のネオプトレモス

スキューロス:目次へ ・前へ ・次へ 若きアキレウスは、母親である女神テティスによって女装させられたうえで、スキューロスのリュコメーデースの宮廷に送られました。その訳は、女神テティスにはトロイアで戦死するという息子の運命が分かっていて、何とか…