神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

2021-01-01から1年間の記事一覧

コロポーン(6):クセノパネース(1)

コロポーン:目次へ ・前へ ・次へ 哲学的な詩を書いて、ギリシア世界のあちこちを放浪したクセノパネースは、BC 570年頃コロポーンに生れました。彼が少年だった頃、コロポーンはリュディア王国の支配を受けるようになりました。幸いなことにリュディアの支…

コロポーン(5):ミムネルモス

コロポーン:目次へ ・前へ ・次へ ミムネルモスはBC 7世紀のコロポーン出身の詩人です。ミムネルモスの生涯ははっきりしませんが、コロポーンで生まれ、やがてスミュルナに渡り、最後はスミュルナがリュディア軍に包囲される中で死んでいったようです。この…

コロポーン(4):BC 7世紀

コロポーン:目次へ ・前へ ・次へ イオーニア人入植後のコロポーンについて伝説はあまりありません。それでも何とか拾ってみましょう。 パウサニアースによると、クラゾメナイを建設したイオーニア人グループは、クラゾメナイ建設以前のある時期、コロポー…

コロポーン(3):イオーニア人の到来

コロポーン:目次へ ・前へ ・次へ 古典時代、コロポーンはイオーニア人の町でした。しかし、今までの話ではイオーニア人は登場していません。ではいつ、どのようにしてイオーニア人はコロポーンに到来したのでしょうか? パウサニアースによれば、モプソス…

コロポーン(2):聖地クラロス

コロポーン:目次へ ・前へ ・次へ コロポーンから海辺の町ノティオンに向う途中の、かなりノティオン寄りのところにクラロスのアポローン神殿がありました。 (コロポーン、クラロス、ノティオンの位置関係) デルポイのアポローン神殿と同じく、ここにも神…

コロポーン(1):起源

コロポーン:目次へ ・次へ コロポーンは小アジアのイオーニア地方にあった町です。コロポーンというのは頂上という意味だそうです。この町のそばには神託の神アポローンの聖所クラロスがありました。BC 7世紀のコロポーン出身の詩人ミムネルモスによればコ…

コロポーン:目次

都市一覧へ 1:起源 コロポーンは小アジアのイオーニア地方にあった町です。コロポーンというのは頂上という意味だそうです。この町のそばには神託の神アポローンの聖所クラロスがありました。BC 7世紀のコロポーン出身の詩人ミムネルモスによればコロポー…

ポーカイア(11):パルメニデース(3)

ポーカイア:目次へ ・前へ 前回、自分の理解の届く範囲内で何とかパルメニデースの思想を紹介したつもりでしたが、その後Wikipediaを読んでいて、プラトーンの「テアイテトス」の中でソークラテースがこんなことを言っていたのを知り、少し後悔しました。 …

ポーカイア(10):パルメニデース(2)

ポーカイア:目次へ ・前へ ・次へ 「昼」(真実の世界)と「夜」(通常の人間の認識の世界。迷妄の世界)とを分かつ門を通って、パルメニデースを載せた馬車は「夜」の世界から「昼」の世界へ進みます。 さてここに女神のいまして ねんごろに私を迎え わが…

ポーカイア(9):パルメニデース(1)

ポーカイア:目次へ ・前へ ・次へ 話を、BC 545年のペルシアによる最初のポーカイア侵攻に戻します。この時ポーカイアの町を捨てたポーカイア人たちは最初、コルシカ島の植民市アラリアに移住し、その後、カルキスが建てたイタリア半島のつま先にある植民市…

ポーカイア(8):ディオニューシオス(2)

ポーカイア:目次へ ・前へ ・次へ このようにイオーニア軍内で内輪もめが起ったのですが、この暗雲はさらに広がることになりました。イオーニア諸都市のひとつであるサモスの司令官はこの戦いは負けると踏んで、戦いが始まったならば戦場を放棄する決心をし…

ポーカイア(7):ディオニューシオス(1)

ポーカイア:目次へ ・前へ ・次へ 40年余り、ペルシアの支配下でおとなしくしていたポーカイアでしたが、BC 499年に南のミーレートスが首謀者になってペルシアに対して起こした反乱にはポーカイアも参加しました。後世イオーニアの反乱と呼ばれた反乱です。…

ポーカイア(6):コルシカ島への移住

ポーカイア:目次へ ・前へ ・次へ ポーカイア人たちが国を捨てた行動は、後世の人々にも大きな印象を与えたようです。この事件の500年後、ローマの詩人ホラティウスは、自作の詩の中で、ポーカイアの人々が町を捨てたように、首都ローマを捨てるように人々…

ポーカイア(5):ペルシア軍の包囲

ポーカイア:目次へ ・前へ ・次へ (上:現在のポーカイア(現在名:フォッチャ)) さて、元々ポーカイアをはじめとするエーゲ海東岸のギリシア都市はリュディア王国の支配下にありました。しかしリュディア王国は、BC 546年にペルシアによって滅ぼされて…

ポーカイア(4):タルテッソスとの交易

ポーカイア:目次へ ・前へ ・次へ ポカイア人はギリシア人の中では遠洋航海の先駆者であり、アドリア海、テュルセニア、イベリア、タルテッソスなどを発見したのもこのポカイア人である。彼らは航海には丸形の船を用いず、五十橈船を用いた。 ヘロドトス著…

ポーカイア(3):マッサリア建設

ポーカイア:目次へ ・前へ ・次へ ポーカイアが建設されてから200年ぐらいの歴史はよくわかりません。その後のことになりますが、信頼性の低い伝説として、「イーリアス」と「オデュッセイアー」を作ったと言われる伝説的な叙事詩人ホメーロスが一時期、ポ…

ポーカイア(2):故郷のポーキス

ポーカイア:目次へ ・前へ ・次へ ポーカイアに植民した人々の故郷であったポーキスは、神話によればポーコスという人物が開発した(または征服した)とされており、このポーコスにちなんでこの地方をポーキスと呼ぶことになった、ということです。このポー…

ポーカイア(1):ポーカイア建設

ポーカイア:目次へ ・次へ ポーカイアは、古代ギリシアの歴史家ヘーロドトスによれば遠洋航海のパイオニアだったということです。どこまで遠洋航海したかというと、ジブラルタル海峡を越えて今のスペインの大西洋岸まで交易網を拡げていました。しかし、そ…

ポーカイア:目次

都市一覧へ 1:ポーカイア建設 ポーカイアは、古代ギリシアの歴史家ヘーロドトスによれば遠洋航海のパイオニアだったということです。どこまで遠洋航海したかというと、ジブラルタル海峡を越えて今のスペインの大西洋岸まで交易網を拡げていました。しかし…

カリュストス(10):その後のカリュストス

カリュストス:目次へ ・前へ マケドニア王ピリッポス2世は、BC 338年カイローネイアの戦いでアテーナイ・テーバイ連合軍を破り、スパルタを除くギリシア本土全体の覇権を握りました。これによってカリュストスもマケドニアの支配下に入ることになりました。…

カリュストス(9):デーロス同盟

カリュストス:目次へ ・前へ ・次へ このあと、ギリシア側はペルシア軍をエーゲ海から駆逐していきます。その過程でアテーナイが中心になってギリシア諸都市からなる対ペルシア軍事同盟が結ばれました。これがデーロス同盟です。同盟参加国は軍船と軍隊を提…

カリュストス(8):サラミースの海戦

カリュストス:目次へ ・前へ ・次へ 夜の内に、ペルシア側の船隊は、ギリシア連合軍が集結しているサラミース港を包囲するように東から西へと延びる長い船列を敷きました。そして兵士たちは、港のギリシア艦隊を睨んだまま一睡もせず、夜明けを待ちました。…

カリュストス(7):ペルシア軍への協力

カリュストス:目次へ ・前へ ・次へ ペルシア王ダーレイオスは、アテーナイに負けた遠征の雪辱戦を計画しました。しかしその遠征の準備中に死去し、後を継いだ息子のクセルクセース王が父親の遺志を引き継いで、ギリシアに攻め込むことになりました。前回の…

カリュストス(6):ペルシア軍の包囲攻撃

カリュストス:目次へ ・前へ ・次へ カリュストスのグラウコスが活躍した時代は、ペルシア王国がエーゲ海東岸まで領土を拡大した時代でした。そしてエーゲ海東岸にあったギリシア人都市はペルシアの支配を受けました(BC 545年)。そのことはグラウコスも耳…

カリュストス(5):グラウコス

カリュストス:目次へ ・前へ ・次へ レーラントス戦争からさらに100年ほど時代を下ったBC 6世紀に、カリュストスにグラウコスという少年がいました。彼は農家の息子でした。その生活は、きっと詩人ヘーシオドスが「仕事と日」に歌った様子に近いものだった…

カリュストス(4):レーラントス戦争

カリュストス:目次へ ・前へ ・次へ トロイア戦争後のギリシアについて、トゥーキュディデースは以下のように述べています。 トロイア戦争後にいたっても、まだギリシアでは国を離れるもの、国を建てるものがつづいたために、平和のうちに国力を充実させる…

カリュストス(3):トロイア戦争

カリュストス:目次へ ・前へ ・次へ トロイア戦争が起こると、カリュストスの人々はエウボイアの王であったエレペーノールに率いられて戦争に参加しました。ホメーロスのイーリアスでは、次のように歌われています。 さてエウボイアを領するは、その勢いも…

カリュストス(2):極北人からの捧げもの

カリュストス:目次へ ・前へ ・次へ カリュストスとデーロス島の関係を示すと思われる伝説がもうひとつあります。それは、北の果ての国に住み、アポローン神を崇拝する極北人(ヒュペルボレオイ)という神話的な種族が、デーロス島に捧げものを送る際に、そ…

カリュストス(1):ロイオー

カリュストス:目次へ ・次へ (上:カリュストスの位置) カリュストスはギリシア本土の東に長く伸びた形で浮かぶエウボイア島の南端にある町です。カリュストスの名は、英語版のWikipediaによればケンタウロス(半人半馬の神話上の種族)の賢者ケイローン…

カリュストス:目次

都市一覧へ 1:ロイオー カリュストスはギリシア本土の東に長く伸びた形で浮かぶエウボイア島の南端にある町です。カリュストスの名は、英語版のWikipediaによればケンタウロス(半人半馬の神話上の種族)の賢者ケイローンとニンフ(妖精)カリクロの間に生…