歴史家のヘーロドトスが小アジアのドーリス地方のドーリス人都市を6つ挙げているなかで、カメイロスについては書いていないことが気になってきました。ヘーロドトスがドーリス人の都市として挙げているのは、次の6つです。すなわち、リンドス、イアーリュソス、カメイロス、コース、クニドス、ハリカルナッソスです。このうちカメイロス以外の5つの都市については記事を書いたのですが、カメイロスだけは書けずにいました。というのも以前調べた時に、カメイロスに関する情報をほとんど得ることが出来なかったからです。しかし、情報がほとんどなくても書いてみようという気になりました。

カメイロスはロドス島にあった町です。島にはほかにリンドスとイアーリュソスの町があり、これらもドーリス人の町でした。そこで、ロドス島にまつわる神話伝説のうち、地名が特定されていない話については、(以前リンドスとイアーリュソスでも書いていますが)ここでも重複を気にせずに書いてみようと思います。

ロドス島はエーゲ海の東側の南に浮ぶ島です。面積でいうと日本の沖縄本島に近い大きさですが、沖縄本島よりずんぐりとした形です。神話の世界でロドス島に最初に登場するのはテルキーネスという種族です。この種族は人間ではありません。その姿は半人半魚とも半人半蛇とも言われています。彼らはとても古い種族で、優れた鍛冶屋であり、クロノスの鎌を作ったのは彼らだと伝えられています。
クロノスというのは神々の王ゼウスの父親で、ゼウスが天下を取る前は神々の王でした。古代ギリシアの神話では神々の王権伝授は平穏には進まず、最初の王ウーラノス(=天)が息子のクロノスに敗れ、次に王となったクロノスは息子のゼウスに敗れて、地中奥深くの世界タルタロスに閉じ込められているというふうになっています。このクロノスの鎌を作ったのがテルキーネスたちということなので、彼らはゼウスが生れるより前から存在していたことになります。
また、テルキーネスたちは、海を支配するポセイドーンがまだ幼児だったころ、その母親のレイアから命ぜられて、カペイラという海に住む女神と一緒にポセイドーンを養育したといいます。そこからもテルキーネスたちの古さが分かります。つまりテルキーネスたちはゼウスによる神界の秩序が確立される以前の世界の種族なのでした。ポセイドーンの持ち物である三叉の鉾を作ったのもテルキーネスたちでした。神々の像を始めて作ったのも彼らでした。彼らはクレータ島からキュプロス島を経てロドス島にやってきたといいます。ロドス島は彼らにちなんでテルキーニスとも呼ばれました。やがて彼らは、(旧約聖書のノアの洪水の話に似た)デウカリオーンの洪水として知られる洪水がロドス島を襲うことを予見し、ロドス島を捨ててさまざまな地方に逃げていったのでした。(以上、高津春繁著「ギリシア・ローマ神話辞典」から情報を得ました。)
幼いポセイドーンを養育したり、ポセイドーンに三叉の鉾を作ってやったりしたことから、私はテルキーネスがギリシア神話の中で肯定的な評価を得ているのかと思ったのですが、実際にはそうではなく彼らは災いをもたらす者と考えられていたそうです。そしてアポローンが矢で射て殺したとも、ゼウスが雷霆で撃って殺したとも伝えられています。おそらくゼウスの支配権が確立してからは、彼らに居場所がなかったのでしょう。古代のギリシア人はテルキーネスに善悪両方の存在を見ていたようです。
さて、テルキーネスたちには妹がいて、名をヘーリアーといいます。このヘーリアーという名前は、太陽(=ヘーリオス)の女性形です。そう考えるとヘーリアーとは、日本神話のアマテラスみたいな神格なのかもしれません。ただ残念なことにヘーリアーについてはあまり話が伝わっていません。ヘーリアーは海の神ポセイドーンとの間に子を儲けました。娘が1人と息子が6人でした。娘の名前はロドスといい、この娘の名にちなんでこの島はロドス島と名付けられました。
いやいやそうではなくて、ポセイドーンと(ポセイドーンの正妃)アンピトリテーの娘ロデーにちなんでロドスと名付けられた、という人々もいます。このあたりははっきりしません。
このロドス、またはロデーが太陽神ヘーリオスと結婚してロドス島で生まれた7名の息子たちを総称してヘーリアダイと言います。彼らは太陽神の息子たちということで、優れた天文の知識を持っていました。なかでも長男のテナゲースは一番優れた知識を持っていました。それを4人の弟たちがねたんでテナゲースを殺して、ロドス島から逃亡してしまいました。弟のなかでオキモスとケルカポスはこの殺人に加わりませんでした。兄のオキモスがロドス島の王となりました。のちにケルカポスはオキモスも娘キューディッペーと結婚し、オキモスからロドス島の王位を引き継ぎました。ケルカポスとキューディッペーの間には、リンドス、イアーリュソス、カメイロスの3人の息子が生れました。この3人はそれぞれ町を建設して、その町に自分の名を付けました。ということでカメイロスの創建者は、ケルカポスの子であり、太陽神ヘーリオスの孫である同名のカメイロスということになります。

(太陽神ヘーリオス)
