神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

2021-01-01から1年間の記事一覧

リンドス(10):カレース

リンドス:目次へ ・前へ カレースはBC 280年頃活躍したリンドス出身の彫刻家でした。彼の一番大きな仕事はロドス市の港に太陽神ヘーリオスの巨像を建設したことです。その建設は、マケドニア王デーメートリオスによるロドス市包囲に対してのロドス市の勝利…

リンドス(9):ロドス市の建設

リンドス:目次へ ・前へ ・次へ ペルシア戦争後、ロドスの町々(リンドス、イアーリュソス、カメイロス)はデーロス同盟に参加しました。そのため、BC 431年から始まるペロポネーソス戦争では、これらの町々はアテーナイ側で戦いました。ペロポネーソス戦争…

リンドス(8):アマシス王の奉納物

リンドス:目次へ ・前へ ・次へ おそらくクレオブーロスが亡くなったあとのことと思いますが、エジプトのアマシス王(在位:BC570~526)がギリシア各地の神殿に高価な奉納をしたことがありました。この時、リンドスのアテーナー・リンディア(神殿)は石の…

リンドス(7):クレオブーロス

リンドス:目次へ ・前へ ・次へ リンドスにドーリス人がやってきたのがBC 10世紀頃とされています。それから400年間は、例によって伝承がほとんどありません(私はそこが知りたいのですが)。BC 6世紀より前のある時点に、リンドスは近隣のドーリス系都市と…

リンドス(6):ドーリス人の到来

リンドス:目次へ ・前へ ・次へ トレーポレモス亡きあと、ロドス島はその妻ポリュクソーによって支配されました。彼女は戦死した夫の葬礼競技を催しました。その後、夫が死んだのもトロイア戦争が原因である、そしてこの戦争の原因はヘレネーであると考え、…

リンドス(5):トレーポレモス

リンドス:目次へ ・前へ ・次へ さてトロイア戦争の時に、リンドスを含むロドス島はギリシア側に立って兵を出しました。それを率いるのはヘーラクレースの子といわれるトレーポレモスでした。 またトレーポレモスはヘーラクレースの子で、性(さが)勇まし…

リンドス(4):アテーナー・リンディア(リンドスのアテーナー神殿)

リンドス:目次へ ・前へ ・次へ ダナオスと50人の娘たちがリンドスに女神アテーナーの神殿を建立したのは、エジプトから無事に脱出することが出来たことを感謝するためでした。とはいえ、伝説によれば彼らは結局はエジプトから追っかけてきたアイギュプトス…

リンドス(3):ダナオスの子孫(ダナオイ)

リンドス:目次へ ・前へ ・次へ ダナオスと50人の娘たちは、ロドス島にはちょっと立ち寄っただけで、すぐに目的地のアルゴスに行ってしまいますので、リンドスとはあまり関係がないのですが、その後の物語はギリシア神話上重要な位置を占めていますので、簡…

リンドス(2):ヘーリアダイとダナオス

リンドス:目次へ ・前へ ・次へ さて、テルキーネスたちには妹がいて、名をヘーリアーといいます。このヘーリアーという名前は、太陽(=ヘーリオス)の女性形です。そう考えるとヘーリアーとは、日本神話のアマテラスみたいな神格なのかもしれません。ただ…

リンドス(1):はじめに

リンドス:目次へ ・次へ ロドス島はエーゲ海の東側の南に浮ぶ島です。面積でいうと日本の沖縄本島に近い大きさですが、沖縄本島よりずんぐりとした形です。古代ここにはリンドス、イアーリュソス、カメイロスの3つの都市がありました。どれもドーリス系の…

リンドス:目次

都市一覧へ 1:はじめに ロドス島はエーゲ海の東側の南に浮ぶ島です。面積でいうと日本の沖縄本島に近い大きさですが、沖縄本島よりずんぐりとした形です。古代ここにはリンドス、イアーリュソス、カメイロスの3つの都市がありました。どれもドーリス系の…

クニドス(9):ソーストラトス

クニドス:目次へ ・前へ アレクサンドロス大王が急死したのち、彼の将軍だったプトレマイオス(1世)はエジプトを自分の勢力下に置くことに成功し、エジプト王に即位しました。彼の治世に首都アレクサンドリアの沖に高さ134mほどの、古代としては巨大な灯…

クニドス(8):クニドス派の医学

クニドス:目次へ ・前へ ・次へ クニドスから北に向って海を越えて20kmぐらいのところにあるコース島は、医聖と呼ばれたヒポクラテースの出身地であり、古代ギリシアの医療の中心地として有名でした。ここでの医療のやり方はコース派と呼ばれていました。こ…

クニドス(7):「クニドスのアプロディーテー」と「クニドスのデーメーテール」

クニドス:目次へ ・前へ ・次へ クニドスのアプロディーテーというのは、クニドスのアプロティーテーの神殿の中にあった大理石の神像のことです。古代ギリシア・ローマ世界で有名な彫像でしたが、残念ながら現存していません。その代わり古代に作られたいく…

クニドス(6):エウドクソス

クニドス:目次へ ・前へ ・次へ クテーシアースがペルシアの宮廷で活躍していた頃に生まれたと思われるクニドス人の中にエウドクソスがいます。エウドクソスの父アイスキネースは星を見ることに興味を持っていたそうで、幼いエウドクソスはその影響を受けま…

クニドス(5):クテーシアース

クニドス:目次へ ・前へ ・次へ ペロポネーソス戦争はスパルタの勝利に終わります(BC 404)。クニドスはスパルタの支配下に置かれます。この頃のクニドス出身の人物としては、ペルシア王アルタクセルクセース2世の侍医をしていたクテーシアースという人物…

クニドス(4):ペロポネーソス戦争

クニドス:目次へ ・前へ ・次へ BC 431年、ペロポネーソス戦争が始まりました。これはアテーナイを中心とするデーロス同盟と、スパルタを中心とするペロポネーソス同盟との間の戦争でした。クニドスはスパルタの植民地でありながら、デーロス同盟の一員とし…

クニドス(3):ペルシアとアテーナイ

クニドス:目次へ ・前へ ・次へ さて、ペルシアの支配下に入って20年ぐらい経った頃、ペルシア王ダーレイオスがイタリア南部のギリシア系都市に送った偵察の者たちを、タラス(現在のターラント)から亡命していたギロスという者が助けたことがありました。…

クニドス(2):ペルシアの侵攻

クニドス:目次へ ・前へ ・次へ クニドスが創建されてから、リュディアの支配下に入るまでの歴史は分かりませんでした。また、リュディアの支配下に入った事情についても明らかではありません。ヘーロドトスはリュディアとイオーニア系都市との攻防について…

クニドス(1):はじめに

クニドス:目次へ ・次へ (上:クニドスを含むドーリスの6都市同盟の都市) クニドスはエーゲ海の小アジア側にあったドーリス系の都市です。クニドスの町の位置は、大陸と、トリオピオンという名の島との境のところにあり、島はわずかなつなぎ目で大陸とつ…

クニドス:目次

都市一覧へ 1:はじめに クニドスはエーゲ海の小アジア側にあったドーリス系の都市です。クニドスの町の位置は、大陸と、トリオピオンという名の島との境のところにあり、島はわずかなつなぎ目で大陸とつながっており、クニドスはまさにそのつなぎ目のとこ…

アブデーラ(9):ヘカタイオス

アブデーラ:目次へ ・前へ アナクサルコスの弟子としてエーリスの人ピュローンが一緒にアレクナドロスの軍に従っていました。彼は従軍中に出会ったインド人の賢者から「アナクサルコスは自分では王の宮廷の世話をしているだけであり、他のだれひとり善き者…

アブデーラ(8):アナクサルコス

アブデーラ:目次へ ・前へ ・次へ さて、デーモクリトスが亡くなった頃からアブデーラの地位は低下し始めました。アブデーラはBC 376年、北方のトリバリ人による略奪を受けました。BC 350年にはマケドニア王国のピリッポス2世の攻撃を受け、その支配下に入…

アブデーラ(7):デーモクリトス(2)

アブデーラ:目次へ ・前へ ・次へ 彼はいわば物理学者の遠い祖先のような人ですが、その他のさまざまな学問も研究していました。彼の著作の範囲は広く、それらは倫理学関係、自然科学関係、数学関係、文芸・音楽関係、技術関係の著作に分類出来るとディオゲ…

アブデーラ(6):デーモクリトス(1)

アブデーラ:目次へ ・前へ ・次へ 前回ご紹介したプロータゴラースが、諸国を遍歴し、アテーナイにも逗留して、人々に知識を教えていたのに対して、彼より約30年あとにアブデーラに生まれたデーモクリトスは、プロータゴラースと同じ哲学者ではありましたが…

アブデーラ(5):プロータゴラース

アブデーラ:目次へ ・前へ ・次へ 前回の最後で、ペルシア王クセルクセースが敗戦に直面してアテーナイから一目散に母国に逃げ帰る際、アブデーラに滞留したことをお話ししました。ディオゲネース・ラーエルティオスの「ギリシア哲学者列伝」の「デーモクリ…

アブデーラ(4):クセルクセース王の接待

アブデーラ:目次へ ・前へ ・次へ ダーレイオス王の次のクセルクセース王の時、BC 480年にペルシアはギリシア本土を攻めるために海陸の大軍を組織し、王自らが軍を率いてギリシア本土に向いました。この時、アブデーラはその進路上にありました。そしてこの…

アブデーラ(3):ペルシアの支配のもとで

アブデーラ:目次へ ・前へ ・次へ テオース人によって再建されたアブデーラの町は、ギリシア世界と内陸部のトラーキアとの間の交易の中継点として栄えました。しかし、彼らが嫌ったペルシアの支配からは結局30年ちょっとの間しか逃れることが出来ませんでし…

アブデーラ(2):歴史的な起源

アブデーラ:目次へ ・前へ ・次へ (上:アブデーラの遺跡とエーゲ海) ヘーロドトスによればBC 545年のペルシアによるイオーニア諸都市攻略のなかでテオースの全住民はテオースを捨ててトラーキアに逃れ、アブデーラの町を建設した、ということです。そし…

アブデーラ(1):神話的な起源

アブデーラ:目次へ ・次へ アブデーラはBC 544年にテオース人によって建設されたということなので、かなり歴史としてしっかりしている時代に起源をもっています。そういう意味では神話と歴史の間の対象になる町ではないとも言えます。それでもこの町にも神…