神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

2020-01-01から1年間の記事一覧

トロイア(3):伝説における初期のトロイア

トロイア:目次へ ・前へ ・次へ 現実のトロイアについてお話しする前に、伝説上のトロイアについて、その起源から、それぞれの時代にどのようなことがあったと伝えられているかを、ご紹介したいと思います。トロイアの伝説の範囲は、単にトロイア戦争に留ま…

トロイア(2):トロイア戦争の原因

トロイア:目次へ ・前へ ・次へ (伝説の中で)トロイアは滅亡しました。しかし、それが人々の印象に残るような話であるためには、滅亡前のトロイアが栄華を極めているほうがよいでしょう。そのためか知りませんが、ギリシア人は伝説の中で、滅亡前のトロイ…

トロイア(1):トロイの木馬

トロイア:目次へ ・次へ ギリシア神話・英雄伝説の中でトロイア戦争の物語は大きな位置を占めています。今までこのブログでも何回かトロイア戦争について言及してきました。そこで、いつかはトロイアを取り上げないといけないな、と、ずっと思ってきていま…

トロイア:目次

都市一覧へ 1:トロイの木馬 ギリシア神話・英雄伝説の中でトロイア戦争の物語は大きな位置を占めています。今までこのブログでも何回かトロイア戦争について言及してきました。そこで、いつかはトロイアを取り上げないといけないな、と、ずっと思ってきて…

カルキス(12):アリストテレース

カルキス:目次へ ・前へ ペロポネーソス戦争の末期にカルキスを始めとするエウボイア島の諸都市はアテーナイの支配から離脱することに成功しました。BC 404年にはアテーナイがスパルタに降伏します。 それからずっと時代を下ったBC 323年、古代ギリシアの大…

カルキス(11):戻ってきたアテーナイ人入植者

カルキス:目次へ ・前へ ・次へ カルキスはサラミースの海戦に20隻の軍船で参加します。この海戦ではギリシア側が快勝しました。ペルシア王クセルクセースはアテーナイを占領し、小高い山に玉座を据えて観戦していたのですが、自軍の敗北が明らかになると…

カルキス(10):アルテミシオンの海戦

カルキス:目次へ ・前へ ・次へ BC 480年、ペルシアは再びギリシア本土に進攻してきます。今回はダーダネルス海峡(当時の呼び方ではヘレースポントス海峡)を渡り、今のブルガリア経由で、北から攻めて来たのでした。ギリシア軍は陸上部隊はテルモピュライ…

カルキス(9):アテーナイ人入植者

カルキス:目次へ ・前へ ・次へ カルキスとエレトリアが交易活動でかつて主役を務めていた証拠のひとつとして、古典期のギリシアで使われていた重さ単位が「エウボイア・タラントン」と呼ばれていたことが挙げられます。重さの単位は価値の単位でもありまし…

カルキス(8):パネーデースの判定

カルキス:目次へ ・前へ ・次へ レーラントス戦争で戦死したカルキスの王らしきアンピダマースの葬礼に伴う競技において、詩人のヘーシオドスが歌競べの競技に優勝したことを「6:レーラントス戦争(1)」で紹介しました。これについては後世の資料で信ぴ…

カルキス(7):レーラントス戦争(2)

カルキス:目次へ ・前へ ・次へ レーラントス戦争の同時代人の証言としては、ヘーシオドスのほかに、彼よりあとに生れた詩人アルキロコスがいます。彼の次の詩の断片は、レーラントス戦争のことを唱っている可能性があるそうです。 アレスが平野で戦闘を交…

カルキス(6):レーラントス戦争(1)

カルキス:目次へ ・前へ ・次へ このように当時のギリシアのなかでも飛びぬけて繁栄していたらしいカルキスとエレトリアですが、BC 710年頃、この両者が互いに戦うことになります。戦争の原因はレーラントス平野の領有権でした。それまで両者が共同で使用し…

カルキス(5):植民活動

カルキス:目次へ ・前へ ・次へ カルキスの南と東には、レーラントス平野という平野が広がっています。日本のウィキペディアの記述では「レラントス平野は農業に適しており、ギリシアでは肥沃な土地は希少なものであった。」とか「豊かなレラントス平野」(…

カルキス(4):トロイア戦争ののち

カルキス:目次へ ・前へ ・次へ では、アウリスでの悲惨な出来事から別れて、その後を見てみましょう。その後、ギリシアの艦隊はトロイアに向い、カルキスの王エレペーノールも40隻の船を率いて参加したのでした。「(2):エレペーノールとアバンテス族…

カルキス(3):アウリス

カルキス:目次へ ・前へ ・次へ 「(1)はじめに」でも述べましたが、詩人ヘーシオドスが、船に乗って海を渡ったのは一回しかない、それもアウリスからエウボイア島に渡った時の一回だけだ、と述べた時に、このアウリスについて、その昔、トロイアに出征す…

カルキス(2):エレペーノールとアバンテス族

カルキス:目次へ ・前へ ・次へ カルキスという町の名前は、コンベーというニンフ(妖精)が青銅の武器をそこで発明したので、青銅を意味するカルコスという言葉からつけられた、ということです。また、カルキスなどエウボイア島の都市を建設した人々をアバ…

カルキス(1):はじめに

カルキス:目次へ ・次へ カルキス(現代名:ハルキダ)はエウボイア島(現代名:エヴィア島)にある都市です。このエウボイア島というのは大きい島で、日本でいえば佐渡島よりも大きく、四国よりも小さいという感じです。この島のおもしろいところは、大陸…

カルキス:目次

都市一覧へ 1:はじめに カルキス(現代名:ハルキダ)はエウボイア島(現代名:エヴィア島)にある都市です。このエウボイア島というのは大きい島で、日本でいえば佐渡島よりも大きく、四国よりも小さいという感じです。この島のおもしろいところは、大陸…

イアーリュソス(11)ロドス(2):ロドス島の巨像

イアーリュソス:目次へ ・前へ さて、デーメートリオスは軍をロドス島から撤退させましたが、それはエジプト王プトレマイオスの軍隊がロドス島に到着したからでもありました。デーメートリオスの軍勢の撤退が非常に慌ただしいものだったために、攻城櫓を始…

イアーリュソス(10)ロドス(1):絵画イアーリュソス

イアーリュソス:目次へ ・前へ ・次へ ロドス市が建設されてから100年ほど経ったBC 305年、ロドス市はマケドニア王デーメートリオス1世の軍隊によって包囲攻撃を受けていました。デーメートリオスはロドス市に対して、エジプト王プトレマイオス1世との同盟…

イアーリュソス(9):ロドス市の建設

イアーリュソス:目次へ ・前へ ・次へ BC 431年、ギリシア世界はアテーナイ側とスパルタ側に分かれ、ペロポネーソス戦争が始まります。イアーリュソスを含むロドスの町々はドーリス系でしたがもともとデーロス同盟に参加していることからアテーナイ側に付き…

イアーリュソス(8):ディアゴラス

イアーリュソス:目次へ ・前へ ・次へ ディアゴラスはイアーリュソス出身のボクサーで、前回登場したティーモクレオーンの同時代人でした。彼はオリュンピア競技(いわゆる古代オリンピック)でボクシングで2回優勝しました。そのほかに古代ギリシアの有名…

イアーリュソス(7):ティーモクレオーン

イアーリュソス:目次へ ・前へ ・次へ BC 480年の「サラミースの海戦」まで時代を下ります。ペルシア王クセルクセースは陸海の大軍を率いてギリシア本土に攻め込み、アテーナイを占領し火を放って町を破壊しました。一方、ギリシア連合海軍はアテーナイ沖の…

イアーリュソス(6):ドーリス6都市同盟

イアーリュソス:目次へ ・前へ ・次へ それではイアーリュソスに住みついたドーリス人はどこから来たのでしょうか? アメリカのWikipediaの「ロドス島」の項を見ても、それについての情報はありませんでした。私は、ペロポネーソス半島のアルゴスが、ロドス…

イアーリュソス(5):ドーリス人の到来

イアーリュソス:目次へ ・前へ ・次へ 古典時代、イアーリュソスはドーリス系の町でした。ドーリス人というのは英雄ヘーラクレースの子孫と称する人々に率いられた集団です。トロイア戦争のところで登場するトレーポレモスはヘーラクレースの息子なので、ト…

イアーリュソス(4):トレーポレモス

イアーリュソス:目次へ ・前へ ・次へ さてトロイア戦争の時に、イアーリュソスはギリシア側に立って兵を出しました。それを率いるのはヘーラクレースの子といわれるトレーポレモスでした。ただし、これがイアーリュソスだけのことではなくて、リンドス、カ…

イアーリュソス(3):ヘーリアダイ

イアーリュソス:目次へ ・前へ ・次へ 今回も主要な情報源は、高津春繁著「ギリシア・ローマ神話辞典」です。ギリシア・ローマ神話辞典 (1960年)Amazon さて、テルキーネスたちには妹がいて、名をヘーリアーといいます。この名前、太陽(=ヘーリオス)の女…

イアーリュソス(2):テルキーネス

イアーリュソス:目次へ ・前へ ・次へ まずはイアリューソスに限定せずロドス島全体に関係する神話からご紹介します。神話の世界でロドス島に最初に登場するのはテルキーネスという種族です。この種族は人間ではありません。その姿は半人半魚とも半人半蛇と…

イアーリュソス(1):はじめに

イアーリュソス:目次へ ・次へ ロドス島はエーゲ海の東側の南に浮ぶ島です。面積でいうと日本の沖縄本島に近い大きさですが、沖縄本島よりずんぐりとした形です。古代ここにはイアーリュソス、カメイロス、リンドスの3つの都市がありました。どれもドーリ…

イアーリュソス:目次

都市一覧へ 1:はじめに ロドス島はエーゲ海の東側の南に浮ぶ島です。面積でいうと日本の沖縄本島に近い大きさですが、沖縄本島よりずんぐりとした形です。古代ここにはイアーリュソス、カメイロス、リンドスの3つの都市がありました。どれもドーリス系の…

ナクソス(13):イオーニア人(2)

ナクソス:目次へ ・前へ しかしヘーロドトスの記事を考慮すると、前回の最後に述べたようなすっきりした推測になりません。まずヘーロドトスはイオーニア人は混成種族だと主張します。 彼ら(=イオーニア人)の重要な構成要素を成しているエウボイアのアバ…