神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

イアーリュソス(3):ヘーリアダイ

今回も主要な情報源は、高津春繁著「ギリシアローマ神話辞典」です。


さて、テルキーネスたちには妹がいて、名をヘーリアーといいます。この名前、太陽(=ヘーリオス)の女性形です。そう考えると日本のアマテラスみたいな神格なのでしょうか・・・。ただ残念なことにヘーリアーについてはほとんど話が伝わっていません。ヘーリアーは海の神ポセイドーンとの間に子を儲けました。娘が1人と息子が6人です。テルキーネスたちが半人半魚だったことや、ヘーリアーがポセイドーンと結婚したことからヘーリアーも海に親しい姿をしていたのかもしれません。生れた娘はロドスといい、この娘の名にちなんでこの島はロドスと名付けられました。


いやいやそうではなくて、ポセイドーンと(ポセイドーンの正妃)アンピトリテーの娘ロデーにちなんでロドスと名付けられた、という人々もいます。このあたりははっきりしません。


このロドス、またはロデーが太陽神ヘーリオスと結婚してロドス島で生まれた子供たちを総称してヘーリアダイと言います。

(太陽神ヘーリオス


ヘーリアダイは7人の息子たちでした。彼らは太陽神の息子たちということで、優れた天文の知識を持っていました。なかでも長男のテナゲースは一番優れた知識を持っていました。それを4人の弟たちがねたんでテナゲースを殺してしまいます。そして彼らはロドス島から逃亡しました。弟のなかで殺人に加わらなかったのは2人で、オキモスとケルカポスといいます。兄のオキモスがロドス島の王となりました。のちにケルカポスはオキモスも娘キューディッペーと結婚し、オキモスからロドス島の王位を引き継ぎました。ケルカポスとキューディッペーの間には、イアーリュソス、リンドス、カメイロスの3人の息子が生れました。この3人はそれぞれ町を建設して、その町に自分の名を付けました。ということでイアーリュソスの町は、ケルカポスの子であり、太陽神ヘーリオスの孫であるイアーリュソスによって作られたことになります。


英語版Wikipediaの「イアーリュソス」の項を見ると、よく理解出来ない部分(アカイアの砦 the fort Achaeaに関する記述)があるのですが全体としては、ヘーリアダイは最初からイアーリュソスに住んでいたという説もあった、というふうに理解出来る記述がありました。この場合ですと、町は先にあって、あとで名前をケルカポスの息子イアーリュソスにちなんでイアーリュソスに変更した、ということになるようです。


また、英語版Wikipediaの「イアーリュソス(神話)」の項を見ると、イアーリュソスはケルカポスの息子ではなく、ダナオスという男のであると書かれていました。そうなるとイアーリュソスの性別まではっきりしなくなって困ってしまいます。ともかく、いろいろな伝説が存在するのだ、と私は理解することにしました。ダナオスについては、エジプトからペーロポネソス半島のアルゴスに向う途中でロドス島に上陸した、という伝説もあります。私はこの伝説も気になっています。もしこれが、エジプトからロドス島への文化的な影響を表しているとしたら、ロドス島の主神が太陽神であることの理由もエジプト宗教の影響と推定出来るからです。古代エジプトでは太陽神の崇拝が盛んだったからです。