神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

2022-01-01から1年間の記事一覧

サモトラーケー(7):入信の儀式

サモトラーケー:目次へ ・前へ ・次へ サモトラーケーの秘儀で礼拝を受けていた神々をカベイロイと呼ばず、偉大なる神々と呼んだほうがよさそうですが、では偉大なる神々とは何なのかと言われると私には答がありません。なので、もうこれ以上サモトラーケー…

サモトラーケー(6):カベイロイ(2)

サモトラーケー:目次へ ・前へ ・次へ ギリシア・ローマ神話辞典 (1960年)Amazon次に、高津春繫氏の「ギリシア・ローマ神話辞典」の「カベイロイ」の項の記述にあった「前5世紀以後航海者の保護神とも考えられ、この点から彼らはディオスクーロイと同一視さ…

サモトラーケー(5):カベイロイ(1)

サモトラーケー:目次へ ・前へ ・次へ ギリシア・ローマ神話辞典作者:高津 春繁岩波書店Amazon前回ご紹介した、高津春繫氏の「ギリシア・ローマ神話辞典」の「カベイロイ」の項の記述の、根拠になるものを探していたところ、ネット上にキングス・カレッジ・…

サモトラーケー(4): ヘーロドトスの密儀入会

サモトラーケー:目次へ ・前へ ・次へ サモトラーケーの町の事績についてはこれ以上あまり話すことを持ち合わせていません。それで話をサモトラーケーの秘儀のほうに持っていきたいと思います。 ペルシア戦争が終わったのち、歴史家のヘーロドトスはペルシ…

サモトラーケー(3):ペルシア戦争まで

サモトラーケー:目次へ ・前へ ・次へ BC 8世紀にギリシア人がサモトラーケーにやってきて町を作ったあと、サモトラーケーの町にはどんなことがあったでしょうか? これについてはあまり伝わっていないようです。ただし、島から北の大陸側のトラーキアに領…

サモトラーケー(2):カドモス

サモトラーケー:目次へ ・前へ ・次へ サモトラーケーからトロイアの王家が発祥したことをお話ししましたが、サモトラーケーはギリシア本土のテーバイとも神話上の関係があります。テーバイがフェニキアの王子カドモスによって作られたという伝説は「テーラ…

サモトラーケー(1):はじめに

サモトラーケー:目次へ ・次へ サモトラーケー島は、エーゲ海の北東の隅にある島です。この北の大陸側はトラーキアといい、古代にはトラーキア人が住んでいました。この島は古くはサモス島と呼ばれていましたが、南にあるサモス島と区別するために「トラー…

サモトラーケー:目次

都市一覧へ 1:はじめに サモトラーケー島は、エーゲ海の北東の隅にある島です。この北の大陸側はトラーキアといい、古代にはトラーキア人が住んでいました。この島は古くはサモス島と呼ばれていましたが、南にあるサモス島と区別するために「トラーキアの…

グリューネイア(2):アポローンの神託所

グリューネイア:目次へ ・前へ さて、「(1):起源」でご紹介した創建伝説ではグリューネイアとペルガモンの2つの都市が並んで登場していました。このうちペルガモンはのちのヘレニズム時代にペルガモン王国の首都として大いに栄えました。しかし、その…

グリューネイア(1):起源

グリューネイア:目次へ ・次へ グリューネイアはレスボス島の東の大陸側にある町で、レスボス島の諸都市と同じアイオリス系のギリシア人による町でした。 グリューネイアはその名前に異称が多く、グリューニア、グリューネイオン、グリューニオン、グリュー…

グリューネイア:目次

都市一覧へ 1:起源 グリューネイアはレスボス島の東の大陸側にある町で、レスボス島の諸都市と同じアイオリス系のギリシア人による町でした。グリューネイアはその名前に異称が多く、グリューニア、グリューネイオン、グリューニオン、グリューノイとも呼…

メーテュムナ(13):メーテュムナのワイン

メーテュムナ:目次へ ・前へ アテーナイが降伏したあとのメーテュムナについてはよく分かっていないようです。英語版のWikipediaにはこう書かれていました。 BC 4世紀のメーテュムナの歴史に関する私たちの知識は限られていますが、都市としてのその名声は…

メーテュムナ(12):両陣営の狭間で(2)

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ 国外追放された人々は富裕な人々であったので、その富で兵士を募集したのち、翌年、主導権奪回のためにメーテュムナへ攻めてきました。 メーテュムネー市民の中で、追放刑に附されて町を追われていた、とりわけ富裕な一…

メーテュムナ(11):両陣営の狭間で(1)

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ その後もペロポネーソス戦争は続きます。アテーナイはシケリア島(今のシシリー島)の都市シュラクーサイ(今のシラクサ)を攻撃するために大軍を派遣しましたが、メーテュムナもこの攻撃に参加しました。しかしこの大軍…

メーテュムナ(10):ミュティレーネーの反乱(2)

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ その後メーテュムナはアンティッサを逆に攻めましたが、アンティッサに迎撃され撤退しました。 かれらが撤兵すると、対してメーテュムネー人も兵を繰りだしてアンティッサを攻撃した。だが城内からの迎撃に遭い、アンテ…

メーテュムナ(9):ミュティレーネーの反乱(1)

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ ペロポネーソス戦争は、アテーナイを中心とするデーロス同盟諸国とスパルタを中心とするペロポネーソス同盟諸国の間で戦われた戦争です。この戦争はBC 431年から404年まで30年近くにわたって続きました。メーテュムナは…

メーテュムナ(8):デーロス同盟

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ BC 490年、ペルシア王ダーレイオスは軍を派遣してギリシア本土のアテーナイを攻撃しましたが、撃退されました。BC 480年にはダーレイオスの跡を継いだクセルクセース王が自ら陸海軍を率いて再度ギリシア本土に侵攻しまし…

メーテュムナ(7):イオーニアの反乱

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ ペルシアの初代の王キューロスの時にペルシアに服属したメーテュムナでしたが、キューロスの次にペルシア王になったカンビュセースがエジプトを征服する時、その軍の中に、レスボス島のミュティレーネーの船があったこと…

メーテュムナ(6):ダフニスとクロエー

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ 前回の「(5):ディオニューソス神の顕現」では、小説「ダフニスとクロエー」の中でメーテュムナに関係して、前回紹介したディオニューソスと海賊たちの話と似たような情景が登場することを述べましたが、それは以下の…

メーテュムナ(5):ディオニューソス神の顕現

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ 前回の「(4):アリオーン」について英語版のWikipediaにちょっと面白い記事があったのでご紹介します。そこでは、このアリオーンの伝説に関連があると思われる神話としてホメーロス風讃歌の中の「ディオニューソスへ…

メーテュムナ(4):アリオーン

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ アリオーンはBC 7世紀末か6世紀初頭に竪琴奏者として活躍したメーテュムナの人です。 アリオンは当時彼に比肩するものなしとされた竪琴(キタラ)弾きの歌い手で、われわれの知る限りではディテュランボスの創始者で命名…

メーテュムナ(3):レスボス島植民

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ 伝説によれば、レスボス島にギリシア人(その一派であるアイオリス人)がやって来たのはトロイア戦争が終わってかなり経ってからになります。BC 1世紀の地誌学者ストラボーンは以下のように書いています。 実際、アイオ…

メーテュムナ(2):オルペウス

メーテュムナ:目次へ ・前へ ・次へ ところで「(1):起源」で引用したイーリアスの一節「上(かみ)はマカルの住居というレスボスから、陸(みち)の奥(く)はプリュギエー、涯(はてし)を知らぬヘレースポントスが仕切る限りの国々」は、前後の文脈か…

メーテュムナ(1):起源

メーテュムナ:目次へ ・次へ ギリシアの古典期(BC 5世紀ごろ)、レスボス島には5つの都市国家(ポリス)がありました。ミュティレーネー、アンティッサ、ピュラ、エレソス、メーテュムナの5つです。この中でミュティレーネーについては以前記事をアップ…

メーテュムナ:目次

都市一覧へ 1:起源 ギリシアの古典期(BC 5世紀ごろ)、レスボス島には5つの都市国家(ポリス)がありました。ミュティレーネー、アンティッサ、ピュラ、エレソス、メーテュムナの5つです。この中でミュティレーネーについては以前記事をアップしました…