神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

エペソス:目次

1:エペソスの建設

エペソスは小アジアのイオーニアにあった古代都市で、今ではトルコ領になっています。トルコの観光地として有名なところで、ここは古代ギリシア、ローマ好きにとってその興味を満たす場所だけでなく、新約聖書の中に「エペソ人への手紙」が入っているようにキリスト教徒にとっても重要な場所のようです。・・・・


2:アルテミス神殿

エペソスはかつて、別名アルテミシオンとも呼ばれるアルテミス神殿で有名でした。時代がかなり下りますが、BC 2世紀に選ばれた世界の7つの驚異(「世界の7不思議」というのは誤訳だそうです)の中にエペソスのアルテミス神殿がありました。ちなみに世界の7つの驚異とは以下のものです。・・・・


3:キンメリア人の侵入

アンドロクロスの死後エペソスにどんなことが起きたのか知りたいところですが、例によってこのあたり300年ぐらいの情報はありません。そこで時代を下ってBC 8世紀後半まで行きますと、その頃、現在その痕跡が残っている最初のアルテミス神殿が建てられたことが分かっています。柱・・・・


4:クロイソス

キンメリア人が去ってのち、洪水によってアルテミス神殿は倒壊しました。その後しばらくの間、神殿を再建出来ないでいました。さて、キンメリア人を小アジアから駆逐したのはリュディア王アリュアッテスでしたが、その次に王位に登ったクロイソスは、BC560年頃にエペソスを征服してしまいます・・・・


5:ヒッポナクス

サルディスが陥落しエペソスもペルシアに征服された頃に活躍した、エペソス生まれの詩人がいました。しかし、ひょっとするとこの時にはすでにエペソスを離れて、クラゾメナイに住んでいたかもしれません。というのは年代がはっきりしないのですが、この詩人、ヒッポナクスはエペソスの僭主の・・・・


6:ヘーラクレイトス(1)

「万物は流転する」という言葉で有名なヘーラクレイトスはエペソス出身の哲学者で、エペソスがペルシアに敗れ征服されたBC 546年頃、エペソスの初代の王アンドロクロスの子孫である王家に生まれました。ただ、その頃王家と言っても特別な政治的な権力はなく、ただ「王」という称号と若干の特権・・・・


7:イオーニアの反乱

さて、少しの間ヘーラクレイトスから離れてエペソス市そのものに注目していきます。イオーニアの反乱勃発ののちエペソスはどうなったでしょうか。ミーレートスに集結したイオーニア各都市の軍勢は船でミーレートスを発ち、エペソスにやってきました。なぜエペソスにやってきたかというと・・・・


8:ヘーラクレイトス(2)

ヘーラクレイトスは「すべてのものを通してすべてのものを操る(万有の理法の)意図を知」ろうと努めたわけですが、その学説はどういうものだったでしょうか。ディオゲネス・ラエルティオスによれば、それは以下のような説明になります。ところで、彼の学説は、概略的には、次のようなものであった・・・・


9:ペロポネーソス戦争終結まで

ヘーロドトスの「歴史」を見てもトゥーキュディデースの「戦史」を見ても、エペソスについての記述があまりありません。登場しても単なる地名としての言及しかなかったりします。それで私はイオーニアの反乱(BC 498年)からペロポネーソス戦争終結(BC 404年)までのエペソスをうまく捕捉出来ずにいます。・・・・


10:ヘロストラトス

BC 387年にスパルタとペルシア王国の間で締結されたアンタルキダスの和約によって、エペソスを含む小アジアギリシア都市はペルシア支配下に戻ることになりました。さて、今までエペソスにおけるアルテミス神殿の重要性については繰り返しご紹介してきましたが、そのアルテミス神殿がBC 356年・・・・


11:アルテミス神殿再建

アルテミス神殿炎上の年に生まれたマケドニアアレクサンドロス(のちの大王)は、父親の急死により20歳でマケドニアの王位を継ぎます。そして2年後のBC 334年には小アジアに軍を進め、迎え撃つペルシア軍を蹴散らしました。それからアレクサンドロスとその軍は、小アジアエーゲ海沿岸を南下し・・・・


12:アントニウス

ここまでのエペソスの歴史で1つ特徴的なのはアルテミス神殿の重要さです。もうひとつは、変人が多いということです。悪口詩人ヒッポナクス、人間嫌いの哲学者ヘーラクレイトス、有名になりたいがために死をも恐れず放火したヘロストラトス、と、この町には変人を生み出す土壌がありそうです。・・・・


13:使徒パウロ

エペソスは新約聖書にも登場します。使徒パウロがエペソスに滞在していた時の出来事が、使徒行伝19章に載っています。ところで私はキリスト教についてはそれほど知らないので、私の解釈に何か間違いがありましたら、すみません。そのころ、この道について容易ならぬ騒動が起った。そのいきさつは・・・・


14:ケルスス

「神話と歴史の間のエーゲ海」と言いながら、話も紀元後になりましたので、そろそろエペソスの物語も終わりにしたいと思います。最後に、ケルススという人物について取り上げておこうと思います。エペソスの遺跡の中で目立つものの中に、ケルスス図書館というものがあります。・・・・