神話と歴史の間のエーゲ海

古代ギリシアの、神話から歴史に移るあたりの話を書きました。

2018-01-01から1年間の記事一覧

アイギーナ(1):はじめに

アイギーナ:目次へ ・次へ 今度はエーゲ海の西側にある島アイギーナを取り上げます。この近くにある有名なアテーナイをなぜ取り上げないかと言いますと、アテーナイの歴史ならばネットに多く存在するからです。私としてはそういう都市は避けて、あまり取り…

アイギーナ:目次

都市一覧へ 1:はじめに 今度はエーゲ海の西側にある島アイギーナを取り上げます。この近くにある有名なアテーナイをなぜ取り上げないかと言いますと、アテーナイの歴史ならばネットに多く存在するからです。私としてはそういう都市は避けて、あまり取り上…

テーラ(9):最終回:アトランティス?

テーラ:目次へ ・前へ この頃のテーラについて、ギリシア側の伝承は何かないのでしょうか? まず思いつくのはヘーロドトスが記している以下の記事です。 現在テラと呼ばれている島は、以前はカリステと呼ばれていたがこれは同じ島で、当時はフェニキア人ポ…

テーラ(8):アクロティリ

テーラ:目次へ ・前へ ・次へ このテーラに関する物語の最初で昔テーラが大きな島であって、それが火山の大爆発によって今の形になったという話を紹介しました。この大爆発の時にまだテーラにはギリシア人は来ていませんでした。その爆発は最近の説ではBC 1…

テーラ(7):その後のテーラ

テーラ:目次へ ・前へ ・次へ BC 6世紀、テーラはギリシア本土のアテーナイやコリントスと、エーゲ海東岸のイオーニア地方あるいはそれに近いロドス島、とを結ぶ貿易の中継点として栄えました。BC 515年にスパルタの王子ドリエウスがリビアに植民市を拓こう…

テーラ(6):キューレーネー植民の裏側

テーラ:目次へ ・前へ ・次へ さて、キューレーネーが繁栄したため、この植民の物語はハッピーエンドで終わっているように見えますが、仔細に見ていくとなかなか深刻な状況だったように見えてきます。 たとえば、前回の「テーラ(5):バットス 」で、リビ…

テーラ(5):バットス

テーラ:目次へ ・前へ ・次へ テーラではその後、街づくりが順調に進んでいったようです。残念ながらテーラースの一行がテーラを建設して(BC 9世紀と推定されています)からBC 630年頃までの出来事は今に伝わっていません。そこで話をBC 630年頃まで進めま…

テーラ(4):ミニュアイ人たち

テーラ:目次へ ・前へ ・次へ テーラースがテーラに植民したところに話を戻します。 テーラースはこの時、スパルタで政府に反抗していたミニュアイ人たちを一緒に連れていきました。ミニュアイ人というのはオルコメノスやという町を拠点とする人々のことで…

テーラ(3):エウローペーを探すカドモス

テーラ:目次へ ・前へ ・次へ フェニキアの王アゲーノールにはポイニクス、キリクス、カドモスという3人の息子と、エウローペーという娘がいました。このエウローぺーが美しい少女へと成長した時に、神々の王ゼウスがオリュンポス山の頂にある神々の宮殿か…

テーラ(2):テーラースの植民

テーラ:目次へ ・前へ ・次へ ドーリス人がペロポネーソス半島に侵入した時の話です。ペロポネーソスのスパルタを手に入れたのはヘーラクレースの後裔アリストデーモスでした。彼はアルゲイアーをめとってエウリュステネースとプロクレースの双子を得ました…

テーラ(1):はじめに

テーラ:目次へ ・次へ 今度は、キクラデス諸島の南部、ドーリア人の島テーラを取り上げることにします。 古典期ギリシアの方言の分布図。デーロス島とテーラ島では方言が違う。デーロス島はイオーニア方言、テーラ島はドーリス方言 キクラデス諸島のドーリ…

テーラ:目次

都市一覧へ 1:はじめに 今度は、キクラデス諸島の南部、ドーリア人の島テーラを取り上げることにします。キクラデス諸島のドーリア人の島としてはほかにメロス島(ミロのヴィーナスの出土地)などがあります。テーラは現代の発音ではティラというのだそう…

デーロス島(12):繁栄と滅亡

デーロス:目次へ ・前へ デーロス島が一番繁栄したのは、これよりあと、アレクサンドロス大王が若くして死んで、その帝国が後継者たちによって分割され、互いに覇を争っていたヘレニズム時代と、西方からやがて勢力を増してきたローマに支配され始めた時代…

デーロス島(11):デーロス島の「お清め」

デーロス:目次へ ・前へ ・次へ 「(6):キクラデス文明」でも少し触れましたが、このペロポネーソス戦争の6年目(BC 426年)にアテーナイによるデーロス島の「お清め」が行われています。 同冬、アテーナイ人は神託の命ずるところと称して、デーロス島の…

デーロス島(10):デーロス同盟

デーロス:目次へ ・前へ ・次へ 次の話でもデーロス島は場所としての役割しか果たしていません。その話というのはペルシア戦争ののちアテーナイが組織したデーロス同盟の話です。 さて、エーゲ海の東岸、つまり小アジア側までのギリシア都市がペルシアの支…

デーロス島(9):ギリシア海軍のデーロス島集結

デーロス:目次へ ・前へ ・次へ さて、ダーレイオス王の息子で次代のペルシア王になったクセルクセースはBC 481年、2度目のギリシア侵攻を実行します。今度は前回よりも大規模な軍勢で、海岸沿いの陸を進む陸軍と、海岸沿いの海を進む海軍の2段仕立でした…

デーロス島(8):ダティスの見た夢

デーロス:目次へ ・前へ ・次へ ダティスがデロスの海域から去ったのち、デロスに地震があったとデロスの住民は伝えている。そしてデロスにおける地震は今日に至るまで、これが最初であり最後であったという。(中略) ペルシア軍はデロスを去って後、次々…

デーロス島(7):ペルシア戦争まで

デーロス:目次へ ・前へ ・次へ ではイオーニア人到来以降のことを書いていきます。 キクラデス諸島のすぐ北にはエウボイア島という大きな島がありますが、BC 710~BC 650年頃に行われた、エウボイア島にある2つの町、カルキスとエレトリアの間の戦争、い…

デーロス島(6):キクラデス文明

デーロス:目次へ ・前へ ・次へ では、イオーニア人が到来する以前、デーロス島に住んでいたのは何者なのでしょうか? 古代の歴史家でペロポネーソス戦争(BC 431~BC 404)の歴史を書いたトゥーキュディデースは、それはカーリア人であると言っています。 …

デーロス島(5):イオーニア人の到来

デーロス:目次へ ・前へ ・次へ 伝説ではトロイア戦争が終わって80年目に、ヘーラクレースの後裔を称する人々に率いられたドーリス人が北からペロポネーソス半島に侵入して、そこに住んでいたアカイア人を追い出し、さらにアカイア人がイオーニア人を追い出…

デーロス島(4):歴史の記述の少なさ

デーロス:目次へ ・前へ ・次へ このブログは、取り上げた都市について、伝説と歴史の交じり合う時代からギリシア古典期までの話を紹介する意図で始めたのですが、デーロス島については古典期の歴史の話があまり見つかりません。アポローンの聖地だけに神話…

デーロス島(3):ヒュペルボレオイ(極北人)

デーロス:目次へ ・前へ ・次へ アポローンは誕生するとすぐにヒュペルボレオイの国に赴きました。ヒュペルボレオイというのは「北風(ボレアス)の彼方の住民」という意味です。ギリシア語のヒュペルはアルファベットで書けばhyperで、英語で言うところの…

デーロス島(2):アポローンの誕生

デーロス:目次へ ・前へ ・次へ デーロス島でアポローンが誕生した次第は、ホメーロス風讃歌の中の「アポローンへの讃歌」で歌われています。四つのギリシャ神話―『ホメーロス讃歌』より (岩波文庫 赤 102-6)岩波書店Amazon さて、ゼウスはお妃のヘーラーの…

デーロス島(1):はじめに

デーロス:目次へ ・次へ 今まで、小アジアのミーレートスとハリカルナッソス、レスボス島のミュティレーネーの3つの古代都市について書いてきたのですが、「エーゲ海」と書きながら、その東側に片寄っていました。そこでエーゲ海のど真ん中の都市を取り上…

デーロス島:目次

都市一覧へ 1:はじめに 今まで、小アジアのミーレートスとハリカルナッソス、レスボス島のミュティレーネーの3つの古代都市について書いてきたのですが、「エーゲ海」と書きながら、その東側に片寄っていました。そこでエーゲ海のど真ん中の都市を取り上…

ハリカルナッソス(14):ハリカルナッソスのディオニューシオス

ハリカルナッソス:目次へ ・前へ アルテミシアが死んだあとハリカルナッソスを首都とするカーリア国は、その兄弟たちが順に統治を続けますが、やがてマケドニアのアレクサンドロス大王の軍門に下ります。アレクサンドロスはヘカトムノスの娘アダにカーリア…

ハリカルナッソス(13):ヘカトムノスの一族

ハリカルナッソス:目次へ ・前へ ・次へ ハリカルナッソスはBC 454年までにはアテーナイを中心とするデーロス同盟に参加し、BC 431年からのペロポネーソス戦争において一度もアテーナイに対して反乱することなく、BC 404年のアテーナイの敗戦までデーロス同…

ハリカルナッソス(12):ヘーロドトス(2)

ハリカルナッソス:目次へ ・前へ ・次へ ヘーロドトスの生涯については、岩波文庫の「歴史」の(下)で、訳者の松平千秋氏による解説の中に書かれていましたので、(昭和47年=1972年 と古いですが)それを抜粋して紹介します。 : (一)ヘロドトスの生涯――…

ハリカルナッソス(11):ヘーロドトス(1)

ハリカルナッソス:目次へ ・前へ ・次へ 私の「エーゲ海のある都市の物語」の元ネタのほとんどはヘーロドトスの「歴史」という本です。この話題でいかにもいろいろ知っているようにブログに記事をアップしていますが、この本がなければほとんど何も書けませ…

ハリカルナッソス(10):サラミースの海戦以後

ハリカルナッソス:目次へ ・前へ ・次へ クセルクセース自身は戦いに参加せず、アイガレオス山の麓に玉座を据えてこの海戦を観戦していたのですが、自分の軍の負けを悟ると、一刻も早くギリシアから撤退したいと思うようになりました。その様子を見ていた将…